見滝原ドーム
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だって怒ってるよ?」
「ええ? まだ集合時間じゃないよ?」
「でも、早く行った方がいいよ! 私、パスパレライブもすっごくすっごーく楽しみにしてるから!」
乙和が両手を振りながら言った。
日菜は「ありがとう」と礼を言いながら、部屋から出ていく。
「それじゃあ、あたしはステージに行ってくるね。そういえばフォトンは、もうリハ終わったの?」
「終わったよー。ちょっと疲れたなあ。でも、日菜ちゃんはリハいらないんでしょ?」
「全部覚えてるからね。それじゃあ、また後でね!」
日菜はそう言って、ドームの方向へ向かっていった。
一度見れば何でも覚えられる日菜にかかれば、ドームの地図はすでに頭の中に納まってしまう。
迷うことなどなく、日菜は中心部のドームへの道を進んでいく。
だが、その途中で日菜は足を止める。
その場にいるはずのない人物がいた。ついさっき、この会場の外で会ったばかりの人物。
「晶ちゃん?」
モデル仲間の蒼井晶が、その場にいた。
さっきまでと全く同じ姿。どうやってこの関係者以外立ち入り禁止エリアに来たのか、全く分からない。
ただ。
彼女の顔は、外にいた時とは異なるものになっていた。
モデルとしての笑顔が似合う姿ではなく。
憎しみと嫉妬が入り混じった笑みに。
「よお……日菜ちー」
それは果たして晶の声だったのか。
日菜の知る晶の声とは似ても似つかない、低い声だった。
「なに……? 晶ちゃん……?」
「これからライブなんだよなあ?」
「う、うん……」
普通の受け答えでいいのだろうか。
そんな疑問が日菜の中に去来する。だが、晶は右手を見せつけながら続ける。
「てめえはいいよなあ……? 日菜……」
彼女の右手。そこに着けていた手袋を外し、日菜には見たことがない紋章を見せつける。水玉のような丸みを帯びた刺青が、晶の右手に記されていた。
「晶ちゃん……? それって……」
「うぜえんだよてめえは……だからテメエだけはぶっ潰す……破滅させてやる……粉々にしてやる……!」
「晶ちゃん? 何言ってるの……?」
「だから、今日までニコニコてめえの友達面してやったんだよ……! てめえの晴れ舞台の日に、徹底的にボコボコにしてやんよ!」
「だから、何を……?」
その時。
廊下の照明が砕ける。
晶の頭上にあったそれが光の粉となり、廊下に降り注ぐ。点滅する晶の姿は、叫びだした。
「憎い! 憎い! 憎い! 私よりも人気でキラキラのてめえが憎い!」
「晶ちゃん……?」
晶の言葉は止まらない。
「私にない物を何もかも持ってるてめえが! 何もかもにあふれているてめえが!」
晶の姿が見えたり見えなくなったり。
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