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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第92話:希望を掴む為に
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「今度こそフロンティアに施された封印が解除される」
ウェル博士の言葉に続き、マリアがそう呟く。すると突然ナスターシャ教授が激しく咳き込んだ。元より余命幾許かという体なのだ。本来であればベッドの上で絶対安静にしていなければならない。
「マムッ!?」
「ッ!」
〈リカバリー、ナーウ〉
咳き込むナスターシャ教授を心配するマリアに対し、同じく彼女を心配したソーサラーは魔法で彼女を癒した。その場凌ぎ程度、消えかけた?燭に蝋ではなく火をつけ足すに過ぎない行為だが、やらないよりはマシだった。
「ドクター、マムをッ!?」
口元を押さえていた手を退けると、そこには血がべったりとついていた。マリアは慌ててウェル博士にナスターシャ教授の治療を願った。
「いい加減お役御免なんだけど、仕方がない」
心底面倒くさそうにしながら、ウェル博士はナスターシャ教授を連れて操縦室から出て行った。
マリアはそれを見届けると、操縦桿を握り締め歯噛みした。最早ナスターシャ教授に負担はかけられない。彼女に無理をさせない為には――――
「私がやらねば……私が……」
必死に自分に言い聞かせるマリアを、ソーサラーが横から心配そうに眺めている。
そして、そんな2人の様子を半開きにした扉から壁に手をついたセレナがこっそり覗いていた。
***
未来・颯人・切歌の対峙する艦艇の傍に、二課の仮設本部の潜水艦が浮上し並ぶ。その上には制服姿の響が立っている。
颯人と対峙していた未来は、響に気付くと彼の事など無視してそちらに向かった。
「一緒に帰ろう、未来」
自分に気付いた未来に向って響が話し掛ける。それに対して、未来はバイザーを開きどこか虚ろな目で響の事を見た。
「……帰れないよ。だって私には、やらなきゃいけない事があるもの」
「やらなきゃいけない事?」
「このギアが放つ輝きはね、新しい世界を照らし出すんだって。そこには争いも無く、誰もが穏やかに笑って暮らせる世界なんだよ」
「争いの無い世界……」
切歌と対峙しながら未来の話を聞いていた颯人は、それを絵に描いた餅と思った。
傷付け合う事を肯定する訳ではないが、他人と競い合うからこそ新たなものは生まれる。パフォーマーである彼はそれをよく分かっていた。新しい事に挑戦するという事は、ライバルである同業者と競う事に他ならない。つまり争っているのだ。
争いと無くすという事は、世界に停滞を齎す事に他ならない。
首謀者――聖遺物絡みならまぁウェル博士だろう――は、未来の響を想う心に付け込んでそんな思想を刷り込んだのだろうと予想した。
「私は響に戦って欲しくない。だから、響が戦わなくていい世界を創るの」
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