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吸血鬼は永遠に
メイド
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している様だった。穴が開くほど見つめるとはこの事である。伯爵の強烈な視線に曝されて、ローラは居心地悪そうに体を揺すった。
「あの、何か――」
そう言うのを遮って、伯爵はミラの前に歩み寄ると跪いた。
「お嬢さん、お名前をうかがっても?」
「え、ローラ・バーンズです」
「ミス・バーンズ、貴方は美しい……私と結婚して頂けませんか?」
「は?」
「何を寝ぼけた事言ってやがる!」
マックスが叫ぶ。
「私は本気です」
「は、はあ……でも、お会いしたばかりでいきなりそんな事言われても」
ミラは頬が高揚するのを感じた。今言った通り、会ったばかりの男に告白されたからと言って、何故こんなに赤面しなければならないのか。赤面すべきは向こうである。ローラは何だか馬鹿にされている様な気がして、腹が立った。だが伯爵は顔色一つ変えずに続けた。
「よろしい。確かに、いきなりこの様な申し出を受けても貴女も混乱するだろう。しばらく良く考えて欲しい。私は本心から申しているし、例え貴女が私を愛してくれなくとも、私と結婚すればこの屋敷と広大な所領から得られる利益の半分が、貴女の物になるのだ。悪い取引きでは無いと思うが? 良く考えてくれ。それと……お近付きの印に、これを受け取って頂きたい」
グレイ伯はポケットから銀の鎖に三日月型のムーンストーンの付いたネックレスを取り出した。ソファーの後ろに回り、ローラの首にネックレスを掛ける。
「でも……」
「心配には及ばんよ。それほど高価な物でも無いのだ。まあ、御守りだね。貴女が不幸から身を護れる様に。記念に着けていてもらえると嬉しい」
マックスは呆気にとられて見ていたが、イライラした口調で
「O.K.捜査はこれで終わりだ。ローラ、帰るぞ。見送りは結構! 仕事で来たんだ」
と告げると荒っぽくドアを開けた。

「マックス!」
ミラが慌てて後を追う。二人は停めてあった車に乗り込んだ。マックスはエンジンをかけると、大急ぎで屋敷を後にした。こんな得体の知れない所にもう一秒だってローラを置いておく訳にはいかない。屋敷はみるみる遠ざかり、夕日が辺りを金色に染めていた。麦畑が風に揺れて、まるで金色の海の様である。ローラは後ろを振り返った。屋敷の姿はもう見えなかった。

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