第十六話 ゴールデンウィーク前にその四
[8]前話 [2]次話
「物凄い変わった服装で」
「街を練り歩いていたでしょ」
「あれが凄かったのよね」
咲は愛に言った。
「もう何あれって」
「尾張どころか他の国でも噂になって」
「うつけと評判で」
「これは将来駄目だってね」
「言われてたわね」
「けれどあれはね」
信長の若き日の奇矯な振る舞いはというのだ。
「傾いていたのよ」
「傾奇者だったのね」
「そう、派手な身なりでね」
「若様とは思えない身なりも」
「全部よ」
まさにというのだ。
「傾いていたのよ」
「うつけでもなかったのね」
「そう、うつけじゃないって知ってるでしょ」
「物凄く頭切れたわね」
「信長さんも傾奇者だったのよ」
「それも本物の」
「だから洋服にマントとかね」
これは馬揃えの時の恰好だと言われている。
「そうした格好もね」
「したのね」
「そう、もうね」
それこそというのだ。
「信長さんは本物の傾奇者でね」
「慶次さんもだったのね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「本物の傾奇者でね」
「下着は白だったのね」
「そこに心が出ていたのよ」
「つまりお姉ちゃんは前田慶次ね」
咲はここまで聞いて腕を組んでこう言った。
「そうなのね」
「そうなるかしら」
「私はそう思ったけれど」
「下着は白だから」
「慶次さんも白でね」
それでというのだ。
「同じだってね」
「思ったのね」
「ええ、そうだと思ったけれど」
「それはいいわね、私慶次さん好きだしね」
愛は咲のその言葉に笑って返した。
「あの人みたいだったらね」
「嬉しいのね」
「そう、じゃあこれからも下着はね」
「白ね」
「上下共ね、というか白もね」
この色の下着もというのだ。
「ぐっとくるみたいよ」
「ぐっとって誰が?」
「だから見た人、彼氏さんとかね」
「そうした人がなの」
「そうなるらしいから」
それでというのだ。
「いいのよ、黒もいいらしいけれど」
「白もなのね」
「同じ位いいらしいわ、まあ私黒はね」
この色の下着はというと。
「持ってないし着けたこともないしこれからもね」
「買わないのね」
「多分ね、やっぱり私はね」
「白がいいのね」
「下着はね、けれどそれは私のことで」
愛自身のことでというのだ。
「他の人がどんな下着でもね」
「いいの」
「人それぞれでしょ」
こう言うのだった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ