第六百二十四話 茶道をしてみたその六
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「皆から喜ばれました」
「本当に嫌われていたんですね」
「生前から」
「そうした人ですか」
「はい」
まさにというのだ。
「あの人は」
「そうだったんですね」
「私も外国人ですが」
日本人ではないがというのだ。
「幕末もの、吉田松陰さんが好きで」
「松陰さんを処刑したから」
「嫌いです」
「そうなんですね」
「ちなみに伊藤博文さんも好きです」
松陰の弟子の一人であった彼もというのだ。
「有能でかつ気さくで」
「面白い人なので」
「ですから」
それでというのだ。
「あの人も好きです」
「滅茶苦茶女好きでも」
蝉玉は伊藤博文の代名詞になっているこのことを話に出した。
「それでもですね」
「痛快ですよね」
「あそこまでいくと」
「ですから」
こう話した。
「あの人もです」
「お好きですか」
「はい、ですが井伊直弼さんが茶道を嗜んでいたのは事実で」
「当時の教養の基本ですね」
「殿様が身に着けるべき」
「そのうちの一つで」
「学びはじめた時は殿様ではなかったですが」
逼塞していた頃だった、この頃の彼はチャカポンと呼ばれていた。
「しかしです」
「学んでいて」
「究めていました」
そうだったというのだ。
「そして他のことも」
「陶芸や和歌、居合も」
「学問も」
「教養人だったのですね」
「かなり。そして殿様になって」
「ああなったんですね」
「悪法を手にした独裁者に」
これがこの時代でも変わらない井伊直弼の評価である、頑迷で保守的というよりかは時代の流れがわかっていない人物とされている。
「そしてです」
「ああなったんですね」
「今お話している通りに」
桜田門外の変で首を取られたというのだ。
「そして喜ばれました」
「人前で殺されて首を取られて喜ばれるなんて」
彰子は日本人故に知っているがそれでもあえて思って言った。
「とてもです」
「残念ですね」
「そうですね」
茶道部の部員に答えた。
「生きていてそこまで嫌われていると」
「それだけで」
「やっぱり好かれた方がいいですね」
「私もそう思います」
「その方が」
「幕府を真剣に想っていましたが」
このことは事実であってもというのだ。
「あまりにも強引で」
「人を殺し過ぎたので」
「しかも何かと強く言ったので」
幕府の者達、諸大名に対してもそうであったという。
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