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ストライカーユニットの開発の軌跡
羽の生えた戦車が欲しい
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回っているが」
渡されたスペック表に軽く目を通し、少し嬉しそうにペトリャコフは言った。
それを聞いたヘルムートは、弱々しく返す。
「下回っていたら駄目じゃないですかぁ」
「ふむ、このユニットは初飛行したのか?」
ペトリャコフがヘルムート顔をのぞきながら聞く。
「はい、私が直接試しました。10回ほど」
ヘルムートは唇を尖らせながら、恥ずかしそうに答えた。
「10回!!君はまだ飛べたのか!!その歳で?」
ペトリャコフが驚いて椅子から崩れ落ちそうになりながら、聞く。
「私をまだ25歳です!ワリュキューレの乙女は魔力減衰しないのです!」
ヘルムートが噛みつかん勢いで返す。
「そういえばそうだったな、忘れていたよ」
ペトリャコフは、噴出した汗をハンカチで拭きながら言う。
「それで、耐久試験はしたのかい?」
ペトリャコフはずれた眼鏡をかけ直しつつ聞く。
それに対してヘルムートはうつむきながら答える。
「10時間の耐久試験を5回行い、うち3回は成功、何とかもちました。ですが2回は」
「2回は?」
ペトリャコフが聞く。
「オーバーヒートで、稼働時間を8時間、過ぎた後で出力が急激に低下し、停止しました」
ヘルムートが悔しそうに、早口で一気に答える
「十分だ、十分すぎるよ、ムート、よくやったじゃないか」
ペトリャコフは様子で腕を組みながら感心した様子だ。
「そのあだ名、気に入りません」
ぽつりとヘルムートがつぶやく。
「ハハハ!そうかい!とにかく、コンペティションはこの試作機を出そう!これでいける」
心底嬉しそうに、ペトリャコフはまくし立てた。
「嫌です!こんな駄作機!!!認められません!!!!」
ムートは机をバンバンと、2回たたき叫ぶ。
「ふーん、そうかい?君は羽の生えたティーゲルでも作るつもりかい?」
ペトリャコフは頬杖を突きながらムートに聞き返した。

「羽の生えた重戦車?そんな物を作ってどうするのです?」
キョトンとした様子でムートは聞き返す。
それを聞いたペトリャコフは自分の髭を触りながら言う。
「君は今ティーゲルの様な高級車を作ろうとしているが、司令部が欲しいのは」
「欲しいのは?」
ムートが聞き返し。
「T-34の様な国民車だ、誰でも使える、丈夫なユニットだ」
へルームとも前にビッシっと人差し指を突き出しながらペトリャコフは言ったのだった。
「納得いきません」
ヘルムートは頬を膨らませながら言う。
「コンペティションの準備、頼んだよ。あと図面も部品表もすべて提出するように」
そう言うとペトリャコフは、上機嫌で会議室を後にする。
「いつまでも私を子ども扱いしないで、ペシュカおじさん」
誰もいなくなった、会議室でヘルムートは長い溜息をつく。二人の付き合いは長いようだ。



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