参加者VS怪物たち
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
この異空間は、音がよく伝わる。
赤のヒューマノイドに促されるまま、紗夜はネズミの化け物から逃げる。
「なんなの……」
息を切らしながら、紗夜はこの謎の空間を見渡す。
幻想的な空。オーロラのような美しさだが、それに見惚れる余裕は紗夜にはなかった。
あらゆる方向から、打撃音が聞こえてくる。破壊の声が届いてくる。
「どうして来てしまったの……? 私」
軽率な判断を呪いながら、紗夜は謎の空間を歩き続ける。砂のような足触りに、不快感が残った。
「それに、ここは一体どこなの? 公園じゃないの?」
以前学校の廊下からも変質を目撃した場所。謎の光が輝き続ける遺跡のような場所を、紗夜は茫然と眺めていた。
「どうすれば……え?」
足が進まない。
見下ろしてみれば、足が何やら黒いものに巻き付かれているではないか。
「これは……きゃっ!」
思わず舌を噛みそうになった。
足に巻き付いたもの___一般的に触手と呼ばれる組織___が、紗夜を引き釣り、そのまま吊り上げたのだ。
「な、何!?」
紗夜への負担など一切気にしない触手が、乱暴に紗夜を振り回す。長い髪が乱れ、紗夜の視界を隠していく。
狂った三半規管により吐き気を感じながら、紗夜は触手の出どころの前に突き出された。
「ひっ!」
目に飛び込んできたそれにより、紗夜を支配したのは恐怖。
大きな岩に、蓮コラのように大きな穴が開いている。触手はそのうちの一つから伸びており、他にも自身を巻き付ける触手もあるようだ。その穴は、バランスも相まって、どこかの美術館にある叫びをテーマにした絵を思わせた。
「あ! 人質とか汚えぞ!」
そんな男性の声に、紗夜は首を回す。
見れば、この穴だらけの化け物は、金色の獣のような人物と相対していた。
緑の目と、その顔にある鬣は、まるでライオンのよう。
金のライオンは、紗夜の顔を見て「ああっ!」と叫んだ。
「カワイ子ちゃん!? お前もこっちに来たのか!」
「その声……たしか、多田さん?」
だが、その姿は、と紗夜の口からは出てこなかった。
ここ最近の非日常で、あんなコスプレのような衣装でも、紗夜の精神は驚くことを放棄しているのだった。
多田コウスケ声の金のライオン___その名前がビーストであることを紗夜は知らない。
ビーストは手に持った武器、ダイスサーベルで紗夜を捕縛する怪物を指す。
「おい! カワイ子ちゃんを放せ! このブツブツ野郎!」
だが、怪物は紗夜を放さない。ビーストの前で振り回しながら、別の触手でビーストを薙ぐ。
「ぐおっ!」
肩から落ちたビーストは、腰から緑の指輪を取り出した。
「あの野郎……だっ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ