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狂骨
第四章

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「これでな」
「怨霊はいなくなり」
「祟りも消えましたか」
「そうなりましたか」
「無事にな、では帰ろう」
 こう言ってだった。
 天海は弟子を連れて戻った、そして次の日家康にことを収めたことを話した、そしてここでこうも言った。
「狂骨は侮ってはいけませぬ」
「井戸におるだけではないな」
「はい、井戸が底がありますが水は汲んでも幾らでも出てきます」
「怨みは尽きぬな」
「そうです、ですから」
 それ故にというのだ。
「侮らずです」
「小さいうちに鎮めておくことか」
「それが怨みに対することで」
 それでというのだ。
「ですから」
「すぐに鎮めたか」
「その様にしました」
「祟り、災いはすぐに収める」
「それが政でありますな」
「確かに。井戸の祟りは収まり」
「政もです」
 こちらのこともというのだ。
「祟りを鎮めることも政で」
「他のこともであるな」
「災いは小さいうちに収めるべきかと」
「全くであるな、ではこのこと幕府の政において忘れぬことにしようぞ」
「さすれば天下は長く泰平です」
 天海はこうも言った。
「折角戦国の世が終わったのです」
「ならばな」
「その様にして長い泰平の世を築きましょうぞ」
 天海は家康に微笑んで述べた、そして家康もだった。
 微笑んで頷いた、幕府がはじまり江戸城も江戸の町も築かれだしたはじまりの頃の話である。


狂骨   完


                  2021・5・14
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