第三章
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「お主達は見ておれ」
「お手伝いしなくていいですか」
「我等が鎮めますが」
「そうさせて頂きますが」
「よい」
それはという返事だった。
「拙僧が上様から仰せつかったこと、だからな」
「それで、ですか」
「和上が行われますか」
「それで拙僧達は見ているだけですか」
「それでよいですか」
「うむ、ここは任せてもらう」
天海は微笑んで述べてだった。
そのまま井戸まで向かった、高齢だが足取りはしっかりしていて速さも結構なものであった。そしてだった。
天海は井戸の前に来た、すると。
井戸から白いぼろぼろの着物を着た骸骨がすうっと出て来た、供の僧達はその骸骨を見て震え上がった。
「これは間違いない」
「これは怨霊だ」
「祟るぞ」
「そうなるぞ」
「うむ、これは狂骨じゃ」
天海はその骸骨が何であるか述べた。
「殺されて井戸に放り込まれたか井戸に落ちて死んだか」
「そうしてですか」
「怨みを持っている」
「そうした怨霊ですか」
「そうじゃ、放っておくと底の尽きない怨みを放ってな」
そうしてというのだ。
「それがやがてその場を覆い」
「怨みは祟り」
「そしてですな」
「城全体に祟る」
「そうなりますな」
「そうなりかねん、だからな」
そうなるからだというのだ。
「今はこの井戸に出るだけであるからな」
「ここで、ですか」
「鎮めて災いを取り除く」
「そうしますか」
「うむ、そうする」
こう言ってだ、天海は。
目を閉じ数珠を手にしてその両手を合わせたうえで念仏を唱えはじめた、そしてその念仏が終わった時に。
狂骨は完全に消え去った、それが終わるとだった。
天海は井戸に向かいその中に多くの塩を撒いた、それが終わってから言った。
「これでよい」
「怨霊は静まりましたか」
「そうなりましたか」
「左様、拙僧の念仏で成仏した」
狂骨はそうなったというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「もう安心出来ますか」
「この井戸は」
「そうなった、何故この井戸におったかまではわからぬが」
それでもとだ、天海は弟子達に話した。
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