第五章
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「夏織さんは野の花です」
「華道や茶道もか」
「はい、自然なもので」
「野生なんだな」
「その野生がです」
それがというのだ。
「非常にいいのです」
「君としてはか」
「私だけでなく」
撫一は微笑んでさらに話した。
「父も母も妹もです」
「妹さんいたんだな」
「左様です」
「いい娘で初対面ですっかり仲良しになったのよ」
夏織がまた言ってきた。
「和服の似合う素敵なお嬢さんよ」
「お前人付き合いいいしな」
匠一郎は妹のこの長所にも言及した。
「そうなんだな」
「はい、実は今回も一緒でして」
「はじめまして」
桃色と赤、それに白の振袖姿で黒髪を長く伸ばし切れ長の目と細く黒い眉白い肌に紅の小さな唇を持つ和人形の様な少女が出て来て深々と挨拶をしてきた。
「椛といいます」
「中学二年生なのよ」
夏織が彼女のことも話した。
「おしとやかで本当にいい娘よ」
「コミュお化けなの発揮しているな」
「そうかしら」
「ああ、しかし本当に全然個性が違うな」
撫一と彼の妹それに夏織も見てあらためて思った。
「よくそれでな」
「人は自分にないものに惹かれると聞いています」
撫一は微笑んで彼に話した。
「ですから」
「そうは言うけれどな」
「私も両親も然りで」
「妹さんもか」
「そうかと」
「そうなんだな」
匠一郎はここで腕を組んだ、そして。
ここでだ、彼と夏織の両親が笑って言った。
「いや、娘の長所を見てくれてですか」
「それは何よりです」
撫一と椛に話した。
「ではこれからもお願いします」
「悪いところがあれば何でも言って下さいね」
「ふつつかなところも多いですし」
「そこは私達も注意していますし」
「そうさせて頂いていいですか」
撫一は二人に微笑んで返した。
「そうですか」
「何でも言ってね」
夏織自身も笑って言った。
「私もなおしていくし」
「そう言われますか」
「うん、何かとね」
「それではその様に」
「じゃあこれからもね」
「お願いします」
「今も信じられないけれど上手くいってるんだな」
匠一郎もこのことを認めた、認めざるを得なかった。
「じゃあいいか」
「ほら、言った通りだったな」
「夏織には夏織のいいところがあるのよ」
両親は彼にも笑って言った。
「だから心配は無用だったのよ」
「最初からな」
「そうなんだな、まあそれじゃあな」
匠一郎は両親にも言われてあらためて撫一に言った。
「夏織を宜しくな」
「はい」
撫一は笑顔で応えた、彼と夏織の交際はその時からさらに深くなり。
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