暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
G編
第91話:得体の知れない魔法使い
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完璧なタイミングで放った筈の攻撃も防御も意味を成さず、隙を晒してグレムリンの攻撃を喰らってしまう。

 グレムリンの一撃を喰らい、透が体勢を崩す。そこにさらに追撃が襲い掛かる。顔面を蹴り飛ばされ、透は堪らず大きく体を仰け反らせた。
 それでも何とか踏ん張り反撃を放つが、そんな攻撃が当たる訳も無く続く蹴りが再び顔面に叩き込まれる。二度も顔面を蹴られ脳を揺さぶられふら付く透に、ダメ押しの三発目の顔面キックが襲い掛かり彼は仰向けに倒れた。

「テメェ、あっち行きやがれッ!!」

 これ以上透をやらせてなるものかと、クリスがガトリング砲でグレムリンを銃撃した。素早く回避したグレムリンはクリスの思惑通り透から離れて行く。そのままグレムリンを追い立てるように撃ち続けたクリスは、奴が透から十分に離れたのを見てスカートパーツからミサイルを発射した。

「いくら素早くても、コイツならッ!!」
[MEGA DETH PARTY]

 無数の小型ミサイルがグレムリンに殺到する。ミサイルは次々とグレムリンが居る場所に命中し爆発し、奴の姿が爆炎と煙で見えなくなった。

「どうだ……?」

 あのタイミングだ。回避など出来る訳がない。一瞬しか見えなかったが、防御したようにも見えない。倒せはしなくても、大きなダメージは与えられた筈だ。

「へへ……どんなもんだ」

 何の動きも無い事に、クリスは安堵の表情を浮かべた。

「うんうん、凄い凄い。他の奴ならただじゃ済まなかったかもね」

 その声が聞こえたのはクリスの耳元からだった。声が聞こえると同時に、背後から腕を回され腹と顎先を撫でられる。

「〜〜ッ!?!?」

 指先が触れる程度に撫でられただけなのに、クリスは全身の鳥肌が立つのを感じた。くすぐったさよりも悍ましさを感じ、口からは声にならない悲鳴を上げる。

 彼女に迫る危機に、透が己のダメージを無視してグレムリンに斬りかかった。背後からの攻撃だったが、グレムリンは素早くクリスから離れた。

「と、透――!」

 グレムリンに向けカリヴァイオリンの切っ先を向け威嚇する透に庇われ、安堵するクリスは彼の腕をそっと掴んだ。

 クリスを背後に、しかし息を切らせてグレムリンと対峙する透。

 そんな2人、特に自分に向けて畏怖の目を向けるクリスの姿に、グレムリンは仮面の奥で笑みを浮かべていた。
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