第十三章 思い出したくない!
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炎のごとき輝きを放つ、鮮やかな赤に、慶賀応芽は全身を包まれている。
纏うのは、真紅の魔道着。
令堂和咲のために特別開発されたクラフトを、奪い取ったものである。
右手には剣の柄を握り、その切っ先を軽く床に付けている。
向き合っているのは、本来その魔道着を着るべきだったアサキである。
中学の制服姿だ。
奪われたため、ではない。
もともと真紅の魔道着には興味ない。
着慣れた魔道着へと変身しようとしたところ、応芽にクラフトを破壊されたのである。
アサキは、困惑していた。
応芽がなにを考えているのか、まったく理解が出来ないのだ。
どうして、なんのために、こんなことをするのか。
いつもは、髪の毛を横に流して、おでこを出している応芽であるが、現在だらりと前髪が下がっており、目が隠れてよく見えない。
きっと、おかしみを必死にこらえている、そんな目をしているのだろう。
何故ならば、口元に、まさにそんな感じの笑みが浮かんでいるからだ。
おそらく感情を隠すための、しらじらしい笑みが。
応芽は、ゆっくりと口を開き、ぼそり、言葉を発した。
「殺しはせえへんよ。でもまあ、手足を全部ぶったぎられるくらいは、覚悟しといてな」
あえてであろうか、その爽やかな口調は。
強く歪めた、口元は。
「ウメちゃん……」
対峙しながら、アサキは、震えた声を出した。
自分に危害を加えてこようとしていることを、恐怖したわけではない。
むしろ、応芽のその狂気が、応芽自身の内面へと向かうことが、恐怖であり、また、寂しくて、悲しくて、その気持ちが声の震えとなっていたのである。
応芽は、アサキの気持ちに気付いていないのか、それとも知って満足を深めたか、そのまま言葉を続ける。
「でもな、安心してええよ。腕の一本や二本なんて、ほら、ヴァイスタになれば、すぐ生えるやろからなあ。そいで、役割を果たしてもろた後は、ご褒美に、苦しませずすぐ楽にしてやるわ」
おかしそうに、ふふっと笑い声を出した。
「昇天したら、そのまま大鳥の待っとるとこにでも飛んでいけばええ。大鳥も喜ぶやろ。まあ、そんな世界が、もしもあればやけどな」
「ふざけて正香ちゃんの話をするのはやめて!」
アサキは、声を裏返らせ、怒鳴っていた。
怒っていた。
だが……
きっと演技だ。
本当のウメちゃんは、優しいんだ。
こんなこと、いうはずがない。
と、そう信じているからだろうか。
すぐに力のない表情になり、俯きがちに視線を落とすと、表情と同様に
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