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イベリス
第十五話 慣れてきてその四

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「少しですが」
「それは何よりです」
 速水は咲のその言葉に笑顔で頷いた。
「やはり慣れることがです」
「いいですか」
「慣れるとそれだけ楽になります」
「仕事もですか」
「ですから」
「慣れていいんですね」
「そうです、ただ」
 速水は咲にこうも言った。
「慣れると馴れるは違います」
「馴れるは、ですか」
「こちらはだれる、油断するとです」
「そうした意味ですか」
「私はそう思います、ですから慣れて」
 そしてというのだ。
「そこから成る」
「成る、ですか」
「そうあるべきです」
「仕事に慣れて」
「そしてその仕事を立派に出来る人に成る」
 咲に優しい笑顔で述べた。
「そうなることがです」
「いいんですね」
「そう思います、私はまだです」
 今度は自分のことを話した。
「立派な、本物の占い師に成れていません」
「えっ、店長さんでもですか」
「とても」
 こう咲に答えた。
「成れていません」
「あの、店長さん聞きますと」
「占いが当たる、ですね」
「外れない人だって」
 それで評判だというのだ、事実速水のタロット占いは当たるそして悪いことを避けられると評判である。
「言われていますけれど」
「当たる外れるのではないのです」
「違うんですか」
「占いは道標です」
 そうしたものだというのだ。
「人を救うものです」
「そうなんですか」
「はい、例えば悪い結果が出ます」
 占いをしてというのだ。
「それは悪い運命です、ですが」
「それでもですね」
「その悪い運命をどう回避するか」
「それがですか」
「重要なのです」
 占いではというのだ。
「例えば事故に遭うとします」
「その事故をどう避けるかですか」
「それが問題です、またいい結果が出て」
 先程の話とは逆にというのだ。
「その結果にどう辿り着くか」
「そうしたことが大事ですか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「悪い運命を避けていい運命に至る」
「占いを受けた人にそうなってもらう」
「それが真の占いで」
「店長さんはですか」
「まだです」
「出来ていないんですか」
「そう考えています」
 自分でというのだ。
「ですから」
「まだですか」
「成っていません」
 真の占い師にというのだ。
「残念ですが」
「そうですか」
「はい、これからもです」
 まさにというのだ。
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