第二章
[8]前話
「ふわりちゃんにそっくりの」
「お前等可愛がっていたしな」
「あの娘にそっくりと思って」
「それでだよ」
「外見も毛も大きさもそっくりなぬいぐるみ選んだんだよ」
「ふわりちゃんにそっくりなぬいぐるみを」
「そしてな」
課長は笑顔のままさらに言った。
「声も出せる様にしたんだ、このボタンを入れるとな」
「ママ、パパ元気?私ふわり」
ぬいぐるみから小さな女の子の声がした、課長が背中のボタンを押すと。
「犬は毎日お散歩に連れて行ってご飯たべさせてブラッシングしてね」
「喋られる様にもしたぞ」
「音声も入れて」
「うちの娘にわざわざ喋ってもらったんだよ」
「それで入れて」
「ボタン押したら喋られる様にしたんだ」
「一日中ケージに入れないで無視しないで遊んでね」
ぬいぐるみからさらに声が聞こえてきた。
「保健所に捨てないで。私達家族だよね」
「保健所はとても薄暗くて寒い寒い場所なのよ」
「寂しいの、保健所にいたら」
「五月蠅いとかもういらないとか言わないで」
「性格が変わったんじゃなくて呼んでるだけよ私はここだって」
「殺処分なんて嫌よ、殺さないで」
「いやあ、声入れるのは苦労したよ」
課長はにこにことして話した。
「どうかな、気に入ってくれたかな」
「ケージも持って来たわ」
それも出された。
「ぬいぐるみだからずっと入れていてもいいわよ」
「捨てる時にだけ出さなくてもいいからな」
「ずっと入れていても大丈夫だぞ」
「おもちゃ箱と同じだよ」
「だから貰ってくれ」
「いいプレゼントだろ」
「・・・・・・・・・」
夫婦は喋らない、だが。
顔を赤や青や紫に次々に変えてだった。
憤怒の顔をしていた、だが夫の会社の者達は笑顔のまま言うのだった。
「いらないみたいだな」
「じゃあいいよ」
「俺達もう帰るから」
「精々赤ちゃん可愛がってね」
「食べものも飲みものもいいから」
「こんなところで食べるつもりないから」
こう言ってだった、彼等はプレゼントを持って立ち去った、そして。
消えていた者が他の面々に行った。
「証拠写真ばっちり取ったぞ」
「ああ、そうか」
「じゃあこれであいつ等終わりだな」
「もう完全に」
「後はその写真国崎さん達に送れば」
「それでな」
「あいつ等は人生完全終了だ」
満面の笑顔で言うのだった、そして。
彼等は次の行動に移った、その顔は清々しいものだった。まるで悪人達を成敗した様なそうした顔であった。
最も相応しいプレゼント 完
2021・7・29
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