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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
秘めた想いと現実と
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いし、他にそういう人がいるのなら、その人は大事にしてね』その言葉が、幻聴みたく張り付いてくる。
「それに、如月くんはこうも言ってた。『彼女を支えてやれるのは自分しか居ない』、『パートナーになってやれるのも自分しか居ない』って。だから『彼女の悲運めいた境遇に同情している』、『その悲運から逃がしてやろうという気ではいるよ』って言ったことは、如月くんの本心で、神崎さんに対する想いじゃないのかなって。その後に、『そうでなければ、あの子が何のために自分をパートナーにしたのか、分からなくなっちゃうでしょうからね』って言ってたから、如月くんの神崎さんに対する想いっていうのは、生半可なものじゃなくて、本気なのかな……」
文はそう言ったきり、言い淀むようにしてから口を噤んだ。如月彩斗について何かを続けようとしたものの、すんでのところで押し留めたような、そんな感覚をアリアは刹那に感受する。
彼女が噤んだそれこそが彩斗の真意であるのだと、そう考慮を行き着かせるまでに時間は要しなかった。むしろ文がそれを秘したということは、彼に対する体裁とか、そういうものを少なからず保守しようとしたことの示唆なのではないか。自分に向けられた想いに、名があるならば。
アリアはその想いとやらに、思い当たるだけの仮初の名前を与えてみた。けれど、たった2つ3つぎりの言葉でしか、その仮初は形を持たなかった。その仮初もしょせん仮初に過ぎなくて、仮初という字面のごとく曖昧模糊な存在であることを、彼女は悟る。隣に居続けても、結局は他人──そんな彼の胸臆を見澄ますことなぞは容易ならないことを、頭の隅で理解し始めていた。近すぎて見えないものならば、いっそ離れてしまおうか──それだけは、絶対に、したくない。
アリアにとって、異性を意識するとか異性に惹かれるとかいうことは、今までの経験の中から見ても、そんなに多くはない。そういった点、文に零した独白というのは例外的だった。
何故だか如月彩斗という人間は、既にパートナーという名の掛かり合いが出来てしまったからか、愛おしく思えてしまって、どうにも嫌うことは適わない。やはり、優しさに惹かれていた。
これほどなまでに意識し、惹かれた異性に対する感情──自分が如月彩斗に向けている『意識』の裡面に秘された、その想いとやらに、思い当たるだけの仮初の名前を与えてみた。それは、たった1つきりの言葉でしか、その仮初は形を持たなかった。こともあろうに、その想いは受動的なものではなくて、自分から意識した能動的なものに相違なかった。だからこそ、誤魔化しが効かない。彼に向けている想い──感情に付ける名前というものを、頭の隅で理解し始めていた。
たった2文字。言葉にすれば5文字。けれども羞恥が咽喉を締め付けている。幸か不幸か、胸の内でそれを勘繰るだけ
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