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緋弾のアリア ──落花流水の二重奏《ビキニウム》──
秘めた想いと現実と
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ち着いてる。たとえ何かが起きても、アタシみたいに感覚じゃなくて、自分の論理を軸にして動いてる気がするの。それに、ずっと一緒に居て分かったけど、彩斗の交友関係ってそんなに広くなかった。その中での付き合いとかを見てると、数年来の親友の遠山キンジと、パートナーのアタシに対する接し方は、他の子との態度とは違って見えるの。特に優しいみたい。勝手にそう思ってる。……本当に優しいんだもん」
最後に零した言葉が自分の衷心であることは、彼女自身がいちばん分かりきっている。
「普段から優しいっていうのは、その通りなんだけど──彩斗の優しさって多分、そういう普段からのじゃなくて、また別のところで本当の優しさが分かる気がする。……アタシが彩斗の前で泣いちゃった時も、絶対に指で涙を拭ってくれるの。泣いてる理由も彩斗は分かってるし、慰めてくれる。アタシの性格とか考えとかが分かってるから、絶対にそれを否定しないでくれるの」
降り始めの雨みたく、アリアの口調は細々と、或いは淡々としていた。けれども奥には、少なからず秘めている感情がある。想起した彼の優しさというものを、そっと傍らに添えながら──。
背中を撫でてくれた手や、或いは目元の紅涙を拭ってくれた指の感触を、アリアはまだ覚えている。そうして彩斗の零した自分に対する深慮、換言すれば優しさに彼女は惹かれていた。
「……彩斗みたいな人のことを、お人好しって言うんだと思う。普段から優しい上に、パートナーのアタシのことを第一に考えてるような、そんな感じの人。アタシが頼りにできる人が居れば、それが自分じゃなくても構わないって平気で言える人。全部、アタシのことばっかり。……だから、不思議だなぁって思うのよね。どうしてこんなに優しくしてくれるのか、って」
「でもね」とアリアは照れ隠しの微笑を浮かべながら告げる。
「寝る前に考えると寝付けなくなっちゃうし、授業中に考えると上の空になっちゃうし、なんだか答えが出ないままアタシだけ1人で悩んでるのも馬鹿みたいで、なんかなぁ……って。けど、普段から一緒に隣でいると、どうしても、その……優しくされたら、意識って、しちゃうから」
彼女はそこまで零してから、今の自分の体温が、ちょうど入浴を済ませた後の上気した時と同じくらいであることを察知した。頬の紅潮がこれほどであることを、改めて自覚させられていた。
そうして細めた目から赤紫色の瞳を覗かせながら、視線を何処に落とせばいいのか彷徨する。ある種の想いの吐露から出た羞恥に当てられて、伝えた当の本人を見つめることは出来なかった。
逃げるような心持ちで脚元に視線を落としてから、そのままアリアは両腕に抱えている紙袋に顔を埋める。紙袋に独特の乾いた音色がこの部屋の一帯に響き渡って、古紙のよう
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