第一章
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飛び込んで来た鷹
ヒューストンでタクシーの運転手をしているウィリアム=ブルーソはこの時停留所で同僚にぼやいていた。太って髪の毛は薄くなっていて口周りに髭がある初老の男だ。
「とんでもないハリケーンだな」
「ああ、本当にな」
同僚も頷いた。
「この台風は」
「これでお客さんなんてな」
それこそというのだ。
「来るのかね」
「来ないだろうな」
同僚は本音を述べた。
「そりゃ」
「そうだよな、けれどな」
「ここにいるだけじゃなくてな」
「街も走ってな」
「お客さん探すこともな」
「仕事だからな」
「今度はお前が行くな」
同僚はブルーソに問うた。
「そうするな」
「ああ、これ位の嵐じゃな」
ブルーソは窓の外を見てから同僚に応えた。
「大丈夫だしな」
「そうか、それじゃあな」
「しかしな」
ブルーソはまたぼやいた。
「走ってもな」
「一人もだろうな」
「実際ここにいてもな」
「一台も出てないしな」
「ハリケーンの時に外に出るなんてな」
それこそというのだ。
「やっぱりな」
「相当変わった奴だしな」
「大事な仕事があるかな」
「だからな」
それでというのだ。
「今日はな」
「暇だな」
「ああ、どうせ走っても」
街もだ。
「そうだろ、しかしな」
「仕事だからな」
「行って来るさ」
こう言って実際にだった。
ブルーソは出た、そして。
暫く走っていたが客は来ない、それでやっぱり今日は駄目だと思ったがここで開けた窓の中からだった。
「クァッ」
「何だ!?」
何か入って来た、見れば。
それは鷹だった、ブルーソはそれを受けてだった。
まずは鷹を車の中から出そうとしたが鷹は助手席でじっとしていたので。
「仕方ないな」
まずは停留所に連絡をして戻った、そのうえで同僚に言った。
「この通りな」
「お客さんかよ」
「そのお客さんがな」
「鷹なんだな」
「ああ、どうもハリケーンを逃れてな」
そうしてというのだ。
「車の中に来た」
「そういうことか」
「出そうとしたけれどじっとしていたしな」
「だったらか」
「それに下手に触るとな」
今も車の助手席にいる鷹を見て言った。
「猛禽類だしな」
「危ないぞ」
「鶏だってそうだしな」
「だからか」
「一旦ここまで戻って来た」
停留所までというのだ。
「そうした、じゃあな」
「それならな」
「今日はハリケーンだからな」
これに尽きた。
「だからな」
「それでか」
「明日自然動物保護センターがあるからな」
それでというのだ。
「そこにな」
「預けるか」
「それで野生に戻してもらうが」
「今日はか」
「俺が預かる」
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