暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/WizarDragonknight
青い影
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
茂みの中。
 そんな闇を背景に、右手の森からそれは現れた。

「……誰?」

 左右を白と黒のツートンカラーがデザインされた服の人物。
 髪の一部にはメッシュが入っており、見ただけで中々強い印象を与えてくる。
 それだけでも強烈なのに、さらに彼は、日傘を刺していた。
 すでに空も赤く染まっている時間帯なのに、それでも尚日傘を使っている人を紗夜は見たことがなかった。

「綺麗な夕焼けだね」
「え?」

 思わず紗夜は、夕焼けの方角を見てしまう。冬の乾いた空気を、赤い光が照らしていった。
 彼は続ける。

「この時間帯、人々は逢魔(おうま)(とき)と言うんだろう? 知っているかい?」
「名前だけなら」

 紗夜は警戒しながら答えた。この男を不審者として通報するべきか否かを考えていたが、彼はそんな紗夜のことなど気にせずに続けた。

「面白い考え方だ……この世と異世界との境目。幽霊、妖怪、悪魔、災厄……そんなものと遭遇する時間帯」
「……」

 思い出した。
 紗夜は、一度彼に会ったことがある。
 以前、見滝原中央駅で、日菜に連れられていた時、駅前の噴水広場にいたのだ。
 覚えていてかおらずか、彼は紗夜に向き直る。

「もしかしたら、この時間帯に君と出会った私も、そんな悪魔だったりして……ね?」
「貴方、誰なんですか? 不審者なら、通報しますよ」

 考えていたことを直接ぶつけた。
 すると、彼はほほ笑みながら、紗夜に背を向ける。そのまま背中を曲げて、背後の紗夜を逆さ向きで見つめた。

「いやいや。不審者だなんて心外だな。私は……」

 彼はそのまま、腰から群青色の道具を取り出す。ボタン一回でアイマスクの形に変形するそれは、紗夜には底知れぬ不気味さを感じさせた。

「君の……味方だ」

 彼は、そのままアイマスクを被る。すると、マスクより青黒い闇が溢れ出し、白と黒の体を青く染め上げていく。
 やがて彼は、変わった。
 群青色の体を全身にまとい、胸元の十字に組まれた拘束具が特徴。顔を面で隠し、その奥の赤い双眸が冷たい人物。

「!」

 紗夜は思わず尻餅をつく。
 目の前で変わった異形。それは、聖杯戦争参加者がフェイカーと呼ぶ人物だった。
 フェイカーはそのまま、紗夜へ指を向ける。

「私はトレギア。君の願いを叶えるためにやってきた」

 フェイカー___真名トレギア。偽りの仮面(フェイカー)が、じっと紗夜を見つめていた。
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ