青い影
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茂みの中。
そんな闇を背景に、右手の森からそれは現れた。
「……誰?」
左右を白と黒のツートンカラーがデザインされた服の人物。
髪の一部にはメッシュが入っており、見ただけで中々強い印象を与えてくる。
それだけでも強烈なのに、さらに彼は、日傘を刺していた。
すでに空も赤く染まっている時間帯なのに、それでも尚日傘を使っている人を紗夜は見たことがなかった。
「綺麗な夕焼けだね」
「え?」
思わず紗夜は、夕焼けの方角を見てしまう。冬の乾いた空気を、赤い光が照らしていった。
彼は続ける。
「この時間帯、人々は逢魔が時と言うんだろう? 知っているかい?」
「名前だけなら」
紗夜は警戒しながら答えた。この男を不審者として通報するべきか否かを考えていたが、彼はそんな紗夜のことなど気にせずに続けた。
「面白い考え方だ……この世と異世界との境目。幽霊、妖怪、悪魔、災厄……そんなものと遭遇する時間帯」
「……」
思い出した。
紗夜は、一度彼に会ったことがある。
以前、見滝原中央駅で、日菜に連れられていた時、駅前の噴水広場にいたのだ。
覚えていてかおらずか、彼は紗夜に向き直る。
「もしかしたら、この時間帯に君と出会った私も、そんな悪魔だったりして……ね?」
「貴方、誰なんですか? 不審者なら、通報しますよ」
考えていたことを直接ぶつけた。
すると、彼はほほ笑みながら、紗夜に背を向ける。そのまま背中を曲げて、背後の紗夜を逆さ向きで見つめた。
「いやいや。不審者だなんて心外だな。私は……」
彼はそのまま、腰から群青色の道具を取り出す。ボタン一回でアイマスクの形に変形するそれは、紗夜には底知れぬ不気味さを感じさせた。
「君の……味方だ」
彼は、そのままアイマスクを被る。すると、マスクより青黒い闇が溢れ出し、白と黒の体を青く染め上げていく。
やがて彼は、変わった。
群青色の体を全身にまとい、胸元の十字に組まれた拘束具が特徴。顔を面で隠し、その奥の赤い双眸が冷たい人物。
「!」
紗夜は思わず尻餅をつく。
目の前で変わった異形。それは、聖杯戦争参加者がフェイカーと呼ぶ人物だった。
フェイカーはそのまま、紗夜へ指を向ける。
「私はトレギア。君の願いを叶えるためにやってきた」
フェイカー___真名トレギア。偽りの仮面が、じっと紗夜を見つめていた。
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