第三章
[8]前話
「穏やかで大人しくて」
「慣れた相手には凄く優しいですから」
「外見で判断して欲しくないですね」
「狼犬で狼にそっくりですが」
恐ろしいと言われるこの生きものと、というのだ。
「ですが」
「それでもですね」
「性格はいいんで」
「凄くいい娘ですから」
「誰か家族に迎えて欲しいですね」
「そうですね」
そうした話をしていた、しかし。
ユキの家族は中々名乗り出なかった、だが。
以前ジュリアを発見したチャクリーが施設に来て言ってきた。
「あの、ユキのことを聞いて」
「貴女は確か」
「以前ジュリアを通報した」
「その方でしたね」
「後であの娘のことを聞きました」
ジュリアのことをというのだ。
「狼犬でそして優しい人の家族になったと」
「はい、そうです」
「その通りです」
「あの娘は幸せになりました」
「それで私もと。家族と話して」
そしてというのだ。
「こちらに狼犬の娘がもう一匹いると聞きまして」
「それで、ですか」
「これからですか」
「ユキを迎えてくれますか」
「家族に」
「そうしたくて来ました、それで」
チャクリーはさらに話した。
「その娘と会わせて下さい」
「わかりました」
「それではお願いします」
「そしてどういった娘か知って下さい」
「そのうえで決めて下さい」
「それでは」
スタッフ達に応えてだった。
チャクリーは家族と共にユキと会った、そして彼女をよく見てそのうえで家族に迎えた。
「ではこれから家に連れて帰ります」
「いえ、大きな娘ですが」
「宜しくお願いします」
「大きいですが大人しくていい娘です」
「幸せにしてあげて下さい」
「そうさせてもらいます」
スタッフ達に笑顔で応えてだった。
彼女はユキを家族に迎えて施設を後にした、そして後日ユキと一緒にいる動画を施設に送ったがそこでは。
ユキは大きな身体を動かして家族と幸せに過ごしていた、捨てられた悲しさはもう消えていた。そこには新たな幸せがあった。
捨てられた狼犬 完
2021・7・24
[8]前話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ