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金曜日の夜、市内の居酒屋で僕は、神谷誠一郎さんと会っていた。
「やあ すまないね 来てもらって 一度、ゆっくり話したくてね」
「いいえ、帰っても、飯無いですし」
「そうか 今日は、本町さんのってこともあるが、それよりも、同じ水産を盛り上げようとしている者同士で、何か意見交換出来ればと思ってね」
「絢から聞いてます 実は、絢とのことだけだったら、お断りしようと思っていたんですが、水産業のことについて、いろいろ話した方がいいよって言われたもんで」
「そうか 彼女とのことは、全部聞いた、興味本位じゃぁ無いんだ。君という人間をもっと知りたかったからなんだ。失礼だったんなら、謝ります」
「そんな風に、聞こえたんなら、僕のほうこそ、申し訳ありません すみません」
「そんなことはない 君の海への目標を聞かせてもらえないか」
「僕は、サンゴが好きなんです。彼等は、小さな魚の住処を提供し、卵を守っている。だけど、今、環境のせいなのか、宿命なのか、絶滅の危機に面しています。だけど、彼等は自分で環境を変えることはできない。ならば、人間が守ってやるしかないんです。そうすれば、魚達も安心するし、大きな魚も同じです。魚が居なくなれば、日本人は困ります。ここの居酒屋も、日本の伝統の和食も成り立たなくなります。だから、僕は、サンゴを守る研究をしたいんです」
「君の夢は素晴らしいが、現実、厳しいだろう」
「夢じゃないです。日本の周りには、いっぱいサンゴが生息してます。水産庁、漁業関係者、水産業界、もっと言えば、海鮮のお店なんかが、協力し合えば、研究は進めます。いざという時には、間に合わないんですよ」
「そーだよな それを言われると、少し、耳が痛い 今は、目の前のことしか、考えてないものな」
「僕は、休みの日に、潜っているんですよ サンゴ達に、こんにちは きょうも元気か とか声を掛けているんです 少しでも、長く、生きてもらえるように」
「楽しそうだね 絢ちゃんも、ひがむわけだ」
「絢は、忘れてしまっているかもしれないけど、僕達は小学校入学した時から、席が隣なんです。給食の時、僕の前の席の子がふざけていて、僕のスプーンを落としたんです。それを見ていた絢は、自分のスプーンを僕の机に置いて、拾い上げたスプーンを、ハンカチを取り出して拭いて、何事もなかったように、それで食べだしたんです。何にも言わないで。僕は、あんな優しい子に会ったことが無かった」
「その話は初めて、聞いたよ」
「絢の気遣いって、さりげないんですよね それが、僕には、ここちいいんです 頭も良かった。図形の展開図なんて、見てすぐに書いていた」
「彼女はね 会社に先に来て、男と女のトイレと会議室を毎日、掃除しているんだ。それを
僕は
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