第二章
[8]前話
「このつがいはね」
「そうですね、これで三度目ですが」
「今度はどうなるか」
「上手くいけばいいですが」
「果たしてどうなるか」
「希望を持ちたいね」
ハイデッケンは今度こそ生まれて欲しいと思った、そして。
三度目の卵達は二個は烏に奪われ最後の一つは嘴が殻を割った、これでハイデッケン達はいよいよと思ったが。
「それまで、でしたね」
「結局今回もでしたね」
「産まれませんでしたね」
「雛は」
「うん、人間も子供が産まれない場合があって」
そしてとだ、ハイデッケンは項垂れつつ話した。
「そしてね」
「鳥も同じですね」
「どのつがいにも産まれるとは限らない」
「そうなんですね」
「二羽共まだ温めているけれどね」
孵化しないその卵をだ、映像には必死にそうしている二羽が映っている。
「こうしたこともあるよ、けれど」
「けれど?」
「けれどっていいますと」
「三度目が駄目でも四度目があるよ」
こうも言うのだった。
「だから希望を持つことだよ」
「今回は駄目でもですね」
「また次がある」
「次こそはですね」
「このつがいは」
「そう願おう」
結局今回も孵化しなかった、それで鷲達は見てもわかるまでにしょげかえってしまっていた。だが。
また卵が産まれた、今回は四つだったが。
今回は孵化した、それも四つの卵全てが。
「ピイ」
「ピイピイ」
「ピイッ」
「ピュイッ」
「やったね」
ハイデッケンは卵から出た雛達を見て我がことの様に喜んだ。
「二羽が雄、残り二羽が雌だね」
「四度目で、ですね」
「ようやくですね」
「産まれましたね」
「雄はサンとスター、雌はビリーとナタリーにしよう」
名前も決めた。
「ではこれからね」
「雛達がどうなるか」
「そのことも見ていきますね」
「二羽だけでなくて」
「そうしよう、三度目が駄目でも四度目だよ」
ハイデッケンはここでもこう言った。
「何度駄目でもね」
「希望を忘れない」
「そのことが大事ですね」
「そうですね」
「うん、人間も生きものもそうなんだ」
産まれた雛と彼等を囲む二羽の映像を観つつ言うのだった。
やがて雛達は四羽共無事に育ち巣立った、ハイデッケンはその彼等の巣立ちも見て笑顔になった。子供達が巣立った後も二羽は巣で一緒にいる。ハイデッケンはその彼等をそれからも見守り続けていった。彼等をずっと観ているうちに彼等に対して特別の親しみを感じる様になっていたので。
ハクトウワシの卵 完
2021・7・22
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