第二章
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「雌のベンガルトラでアーシャといいます」
「アーシャですか」
「碌でもサーカス団にいて」
「何処でもそんなところはありますね」
「ペルーにもあるそうですね」
「はい、そこで色々な生きものも保護していきました」
ムフォサのことも思い出しつつ話した。
「これまで」
「そうなのですね」
「それでアメリカでもですね」
「アーシャは体重が十三キロしかなくて」
「虎で、ですか」
「はい、病気も患っていて」
そしてというのだ。
「体毛が抜けて地肌も見えていて」
「それで、ですか」
「こちらに保護されまして」
「治療しましたか」
「はい」
そうしたというのだ。
「一日二回薬を投与して薬を入れたお風呂にもです」
「入れてあげたんですね」
「最初はどちらも嫌がっていましたが」
「それでもですか」
「薬を飲んでくれて入浴も好きになりまして」
「虎は元々水浴びが好きですし」
「そのお陰で」
それでというのだ。
「ご飯もしっかり食べて」
「今みたいにですか」
「八ヶ月でなりました」
「それは何よりですね」
「そしてスマグナーが来て」
「仲良くなったんですね」
「そうです、よかったです」
スタッフは心から喜びの声を出した。
「ここまで元気になってもらって」
「何よりですね」
「全くです、しかし」
ここでスタッフはこうも言った。
「酷いサーカス団もあります」
「ペルーもです」
「何処でもありますね」
「ええ、夢を見せる筈が」
それがサーカスの目的というのに、とだ。ドミンゴも言った。
「それがです」
「裏でそうしたことをするなんて」
「嘆かわしいですね」
「本当に。そんなサーカス団は出来るだけなくて」
「苦しい思いをする生きものもですね」
「いないで欲しいですね」
「全くです」
ドミンゴはスタッフの言葉に頷いた、そしてスマグナーと遊ぶアーシャを見てだった。
ペルーに帰ってムフォサ、今も動物園で幸せに暮らす彼を見てもう不幸にはならないからと優しい声で言ったのだった。
サーカスの中から 完
2021・7・20
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