第一章
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サーカスの中から
ペルーでサーカス団に対する厳しい法律が定められた、それで違法サーカス団も検挙されていった。
その中であるサーカス団も検挙されたが。
「これはな」
「酷いな」
「ライオンがこうなるなんて」
「違法だけはあるにしても」
「あんまりだ」
「ガウ・・・・・・」
見ればだった。
鬣が切られている雄ライオンがトラックの荷台の中にいた、見れば。
重い鎖につながれてだ、まともに動けず。
傍には餌も水もなくだ、弱りきっていた。身体中埃だらけで人を見ても怯えきっていた。その彼を見てだった。
救助した一団の一人サントス=ドミンゴ動物学者であり縮れた黒髪と大きな黒い目と先の割れた顎を持つ浅黒い肌とがっしりした中背の彼は言った。
「他の生きもの達もですが」
「酷いですね」
「どの子も」
「どの子も状況が悪いです」
「それもかなり」
「ですが」
それでもというのだ。
「この子は特に酷いです」
「だからですね」
「すぐに保護して」
「そしてですね」
「そのうえで、ですね」
「はい、治療をしましょう」
こう話してだった。
雄ライオン、サーカス団からはムフォサと名付けられた彼はサーカス団の他の生きもの達と同じく保護されて。
治療を受けた、だが。
ドミンゴは獣医にこう言われた。
「ムフォサが特にです」
「治療が必要ですか」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「それでは」
「集中治療を行います」
こう言ってだった。
ムフォサは集中治療を受けた、そしてだった。
何とか元気になった、それで動物園に入ってそこで暮らすことになったが。
「ガウ」
「ガウガウ」
すぐに他のライオン達とも仲良くなった、ドミンゴはその彼と仲間達を見て一緒に動物園に来ている彼を診察した獣医に話した。
「すっかり元気になりましたね」
「はい、そして」
獣医も応えた。
「お友達も出来て」
「よりよくなりましたね」
「二十年の間です」
「あのサーカスにいましたね」
「はい、ですが」
それでもとだ、獣医はさらに話した。
「今ではです」
「あの通りですね」
「元気になって」
「しかも孤独もなくなった」
「幸せになれました」
「そうですね、本当によかったです」
ドミンゴも心から喜んだ、そしてだった。
彼は仕事でアメリカのテキサスのある野生動物保護センターに赴いた、そしてそのセンターの中でだった。
一匹の雌の虎が熊と一緒にいるのを見て言った。
「ガウガウ」
「ガウ」
「虎と熊とは」
「変わった組み合わせですね」
「はい」
センターのスタッフに答えた。
「まことに」
「左様ですね」
「どうしてこ
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