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雪の中で行方知れずになって
第二章
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 夫婦でだ、エールを飲みつつ話した。
「いい娘達だね」
「そうね、バンジョーとすぐに仲良くなったし」
「大人しい感じだしね」
「いい娘達ね、本当に」
「実はなんです」
 カウンターの中にいる恰幅のいいブロンドの女性が言ってきた、紫の目がアイルランド系らしかった。
「レッドリバーの娘がニーシャ、シェパードの子がハーリーっていうんですが」
「そうすか」
「そうした名前ですか」
「はい、私はエリナ=オシェイ=ゴーテレンといいます」
 彼女も名乗った、恰幅のいい体格にエプロンが似合っている、横では夫らしき髪の毛が薄い男がジョッキにエールを入れている。
「夫婦でこのお店をしてますが」
「どうしたんですか?」
「それで」
「実は去年ウィックローを登った時に」
 二人も登ったその時にというのだ。
「二匹も連れて行ったんですが」
「ああ。迷子にですね」
「そうなったんですね」
「突然出て来た鹿に二匹共驚いて」
 そしてというのだ。
「それで探したんですが次の日この子は見付かって」
「ワン」
 ハーリーが鳴いたのを見つつさらに話した。
「それでニーシャも探したんですが」
「ああ、中々ですね」
「見付からなかったんですね」
「捜索願を出してドローンも使ったんですが」
 そうして探したがというのだ。
「中々見付からないで」
「どうして見付かったんですか?」
「一体」
「登山をしている人が見付けてくれました」
「そうですか」
「それはよかったですね」
「岩の傍で丸くなって震えていたそうで」
 そうだったというのだ。
「大事に連れて帰ってもらって」
「助かりましたか」
「よかったですね」
「本当に。怪我をしていて栄養失調で脱水症状でしたが」
 それでもというのだ。
「動物病院でも手当てをして栄養や水分も貰って」
「助かったんですね」
「よかったんですね」
「二週間もかかりましたが」
 それだけ彷徨っていたがというのだ。
「何とか」
「本当に何よりです」
「助かって」
「そう思います、もう二度と離れたくないです」
 笑顔で話す彼女だった、そしてだった。
 夫婦は彼女の犬の話を聞きつつエールを楽しんだ、そうしてからホテルに帰ってバンジョーを撫でつつ話した。
「雪の中で彷徨っていても」
「助けが来るのね」
「それは奇跡だな」
「そうね、神様がおられるから」
「奇跡はあるんだ」
「それで助かる子がいるのね」
「そう考えると世の中は捨てたものじゃないよ」
 寒い雪の中でも助けが来るからだというのだ。
「出来るだけ遭難しない様にしても」
「希望はあるわね」
「そう、誰かが助けてくれる」
「そうした奇跡があるわね」
「この世はね」
 こう話すのだった、そしてだった。
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