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「絢 大学に戻る前、一度、沖縄に行ってこい 春からの就職先だけど 向こうの水産加工会社だ 電話では、お前のこと、頼んだけど、一度、挨拶に言っておかないとな 向こうだって、面接位はしておきたいだろうし」
「おとうさん そんな、いきなり ウチ、なんも、聞いてへんやん」
「わかっている これは、ワシの言うことを聞いてくれ 心配だし、訳のわからんところに、お前を行かせるわけにいかない カンコー水産は、仕事仲間だから、信頼できる。藤沢さんも、良く知っているところだ。」
「そんな ウチ 食品なんて 全然知らんよ 何も出来ひんよ」
「だから、行って来いって言うんじゃ 何が、出来るんか、確かめてこい 絢に出来ないことなんかあるものか と、ワシは思ってる」
- - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - -
私は、空港からタクシーで、カンコー水産に行った。玄関を入ると、30過ぎ位の女の人が、迎えてくれて、会議室みたいなところに通された。すぐに、お父さんと同じ位の歳の人が入ってきて
「やぁ よく来てくれましたね 神谷です。君のお父さんとは、お互い、社長になり立ての頃からの付き合いでな こんなに可愛い娘さんが居たなんて知らなかったよ 連絡をもらった時はな、うちも、会社を大きくしていくのに、やらなければならないことが増えてきてな ちょうど、人が欲しいと思っていたんだよ 細かいことは、後で来る、息子の誠一郎に聞いてくれ」
「私 食品会社のことなんて、知らないんです。それで、父からよく聞いて来いと」
「今朝、藤沢さんからも、電話あってな 頭が良くて、素直な娘だから、直ぐに仕事は覚えると思うし、おたくの会社なんかには、もったいないぐらいだよと、言っていた。それに、彼氏のことも聞いている。県の職員になるんだって?」
「おじさん、そんなことまで」
「自分の娘のような言い方だったよ あの社長が人を褒めることは滅多にないという話だけどな」
その時、年配の男の人と若い男の人が、入ってきて、私の横に来て挨拶しだした。私、あわてて立ったら、椅子を倒してしまって
「あっ すみません 本町絢と言います あわててしまって、ウチ、ドン臭いんでごめんなさい」
「あー 落ち着いてください 大丈夫ですから 私は、総務の田所と言います よろしく」
「私は、営業と仕入担当の神谷誠一郎と申します どうぞ、お掛けください」と、若いほうの人が言ってくれた。
その後、絵のこととか、合気道のこととか聞かれた。なんで、沖縄に来たいのかは、聞かれなかった。おそらく、この二人は承知しているんだろう。そのうち、社長さんと総務の人は席をはずした。
「仕事の細かいことは、誠一郎から説明します。私は、ちょっと、失礼します」
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