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艶やかな天使の血族
4部 淫楽に堕ちる天使
19話 2つの蛇
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わかった。その前にコンドームはするからね……」

 水菜のタイルに身体を預ける仕草、エロティックだね。喘ぐ姿もいい。
 水菜とすると自分自身の限界も知らないでつながっていられる。
 その度に想う。もっと、もっと深く、魂の奥まで…つながりたい。記憶に刻むものじゃない。魂に刻むものだと想う。
 
「いくよ……水菜」
「アウッ!ウウッ!」
「力を抜いてご覧?お尻を突きだす感じで……」
「どうしたらいいのか……わからない」
「上手く力が抜けてきているね……奥までいけるよ」

 エリオットも目の前の淫楽に陶酔する。
 空っぽになりかけた身体に埋まっていく。悪魔が求める淫楽。ここだけが血の匂いなどしない。匂い立つのは花の香り。
 無意識で腰が踊る。水を浴びながら目の前の花を味わう。俺の顔はどうなっているのだろう?喜んでいるのか?楽しんでいるのか?常に水菜と口づけているようなものだから、俺の顔がどうなっているのかもうわからない。
 汗も自然と流れる。これだけでもスポーツになる。最早、俺達には言葉なんていらないのかも知れない。この身体さえあればいい。心さえあればいい。
 
「ふ、深くきてる…!すごく深くきてるよ…エリオットさん…!」
「どんな気分だい?気持ちいいのか、それとも深すぎるのか…説明してみて…」
「深すぎる…だけど…こんなの初めて…!こんなにも求めてくれる人がいたのが嬉しいの…!」
「腰…動かすよ…」
「エリオットさんはどんな気分ですか?」
「俺は…頭の中はめちゃくちゃだよ。気持ち良過ぎて依存症になりそうだよ」

 激しく腰をゆらし、背後から水菜を覗く。

「でも……逃さない。君とは離れられない。離れたくない」

 せめて仕事がないこの間はこれだけに夢中になりたい。
 酒もいい。煙草もいい。この淫楽が欲しい。何も考えないで本能的になれるこれさえあればいい。
 俺もあいつと同じなのか?
 水菜に溺れたミカエルと同じなのか?
 この子は男を狂わせる魔性の花なのか?
 この子を独占している心地よい時間はいつまで続く?
 俺はどこまでも堕ちる。
 天使という名前の悪魔に。快楽に溺れた悪魔に。欲望に溺れた悪魔になっていく。
 夜が短く感じるのは気のせいか?
 もっと、もっと、彼女が欲しいのは気のせいか?
 欲しい。欲しい…!
 俺の悪魔が言っている。

『もっとこの花の蜜を寄越せ』

 まるで花の蜜に群がる蜜蜂のように、それこそ夜が明けるまで、俺達はずっと身体をつなげ続ける。
 水菜も俺という淫楽の虜になり、俺しか見えていない。
 頭の中はもうめちゃくちゃだ。
 理性も本能も、ただこの淫楽だけが判る。
 
 今にして思えば、あの時、俺は水菜という魔性の花に魅了されていたのだろう。
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