第百五話 ガルフォード、駆けるのことその五
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「兵法の基本だけれど」
「こうしてここまで完璧にされると」
「敵ながら見事ね」
「そうよ。劉備達は敵よ」
このことはだ。はっきりと認識している司馬尉だった。
そうしてだ。彼女はこんなことも言った。
「私達の野心の前に立つね」
「野心の前にいるならば敵」
「そういうことだから」
「その通りよ。敵よ」
また言ったのだった。
「その敵がここまで厳重しているとなると」
「手がありませんね」
「それも全く」
「ならいいわ」
それならそれでだとだ。司馬尉の話が転換した。
そしてだ。妹達にこう言うのだった。
「それならね」
「ええ。それなら」
「姉様、どうするの?」
「次の備えをしておきましょう」
ここで言うのはこのことだった。
「今のうちに」
「そうですか。今からですか」
「次の策をですか」
「仕掛けておきますか」
「赤壁よ」
そこだとだ。司馬尉は言った。
「あの場所に仕掛けておくわ」
「わかりました。それでは」
「あの場所に兵を向かわせましょう」
「密かに」
「そうするわ。あの場所なら」
どうかというのだ。赤壁ならばだ。
「どれだけ大軍が来てもね」
「そうですね。一気に倒せます」
「あの場所なら」
「そうよ。于吉やあちらの世界の住人達にも伝えて」
そうしろとだ。司馬尉は妹達にまた話した。
「次の場所は赤壁よ」
「そうですね。しかしです」
ここでだ。司馬師はだ。
いぶかしむ顔になりだ。姉に尋ねた。
「ですが姉様」
「何かしら」
「今の策が破綻したにしても」
どうかというのだ。そうなってもだ。
「ですがそれでも」
「私があの策につながっていることはね」
「それは知られないのでは」
「ないと思いますが」
実際にそうだとだ。司馬師は言うのである。
「違うでしょうか」
「そうね。普通はね」
公になるものではないとだ。司馬尉も言う。
しかしだ。それでもだった。
司馬尉はだ。こう言ったのだった。
「けれど劉備はともかくとして」
「他の者はですね」
「鋭いわ。そして劉備の下の軍師達も」
劉備にはその彼女達がいるというのだ。
「鋭いわ」
「では私達のことも」
「勘付くと」
「そうだと」
司馬師だけでなく司馬昭も言う。しかしだ。
司馬尉はだ。こう言ったのだった。
「既に勘付いているのかもね」
「確かに。そういえば近頃」
「前よりも増して」
妹達も姉の話を聞いてだ。察した。
そしてだ。彼女達の周囲のことを思い出して述べた。
「私達の周りに人がいます」
「では」
「おそらく。暫くしたら問い詰めてくるわ」
そうしてくるというのだ。
「定軍山からあの娘達が帰って来ればね」
「ではその時にはですね」
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