一海の秘めた思い
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って……出雲姐ちゃんがひどいことしかできない誰かに捕まって………また……また……1人ぼっちになるんじゃないかって………………」
紺子「……カズミン?」
語尾を震わせながら言う一海は今にも泣きそうな顔をしており、目には涙が溜まっていた。
ポタッ
一粒の涙が紺子の頬に落ちる。一海はそれを指で拭うと、あることを問う。
一海「ねえ出雲姐ちゃん、覚えてる?あの日僕が泣いてたことを……出雲姐ちゃんと偶然出会ったことを…………」
ある日の夕暮れ、紺子の家の前にて………。
一海『ひっぐ…………えっぐ…………ごめんね…………ごめんね………父さん…………母さん…………僕のせいで…………僕のせいで…………死んで…………ごめんね………』
紺子『誰かいるのか?』
何らかの理由で泣いているところを買い物帰りの紺子が見つけ、声をかけた。
一海『だ、誰?』
紺子『待て、警戒すんな。こんなトコで何泣いてんだ?』
一海『………僕のせいで…………父さんと母さんが…………死んじゃった………僕が………僕が捕まらなければ……………僕が…………!』
紺子『…………私の家に来るか?』
一海『え?』
この時、紺子の脳裏にあの記憶がよぎった。明治時代中期、初めて惣一と会った自分。声をかけられたところを短刀を向けて警戒した自分。養子となって惣一の家に住んだ自分。全てあの時と同じだ。
警戒する一海に優しい声をかけたのも自分の記憶と全て一致していた。
紺子『私も親がいないんだ。お母ちゃんは目の前で雷に打たれて死んで、お父ちゃんは老衰………お前と一緒だ』
一海『………………』
紺子『一緒に来ないか?』
一海『………………行く』
紺子『そうか。私は出雲紺子。お前は?』
一海『…………藤井…………一海…………』
紺子『なら今日からカズミンって呼んでやるよ』
一海『カズ……ミン………?』
紺子『ああ。その方が親しみやすいだろ?』
一海『…………うん』
そして今に至り、今の一海は紺子の家に居候。1人でなくなって幸せな毎日を送っている。だが、ここで紺子もいなくなれば一海は二度と立ち直れなくなってしまう。
一海「僕、本当のこと言うけど…どこにも行ってほしくないんだ……出雲姐ちゃんが………いなくなることが………怖いんだ………」
紺子「…………そうだったな。けど、いつかは私もお前も嫁がなきゃいけない時が来るだろ?」
一海「それはそうだけど………それでも…………やっぱり出雲姐ちゃんを僕が信用できそうな奴じゃないと渡したくないんだ…………」
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