第107話『次に向けて』
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「う、ごめん……」
結月は未だに拗ねたような口調だ。確かに理由もろくに説明しないまま出てきたし、寂しい想いをさせたに違いない。
かと言って、謝る以外の選択肢が浮かばなかった。
「ん」
「え?」
「ん〜!」
「いやだから何?!」
そんな晴登に向かって、結月は両手を広げた。いきなりの行動に晴登が戸惑っていると、結月は愚図るように何かを催促する。当然、晴登には何かわかっていない。
「……寂しかったからギュッてして」
「な!? 今ここで?!」
察しの悪い晴登に、結月は直接おねだりする。しかしそれを聞いて、はいわかりましたとはならなかった。
何せここは外だし、人の目もある。というか真横に伸太郎がいるのだ。ハグなんて、恥ずかしくてできる訳がない。
「い、今はちょっと汗臭いかもだし……」
「特訓頑張ってた証拠でしょ? ボクは気にしないよ」
「ぐ……」
どうにか回避しようと理由をつけてみるも、全肯定の結月に通ずる訳もなく。どうしようかと迷っている内にも、じりじりと彼女は距離を詰めてきていた。
「う……わかったよ。ほ、ほら」
「わ〜い!」
「うぐ……!」
こうなってしまっては折れるしかない。別にハグが嫌な訳じゃないのだ。むしろ嬉しいし……。
そんなこんなで、ようやく晴登も両手を広げて受け入れる準備をすると、すぐに結月は晴登の胸に勢いよく飛び込み、力いっぱい抱擁した。その余りの衝撃に、思わず呻き声が洩れてしまう。
「ちょ、ちょっと待っ……」
「ぎゅ〜! うん、補充完了!」
「ほ、補充って……何補充したの……?」
「う〜ん、ハルト成分的な?」
「人の名前で新たな物質を作るんじゃない……」
疲れ切った身体にこの力強いハグはさすがに応えたようで、晴登は途切れ途切れに言葉を返す。こんなのを毎回喰らっていたら身体が持ちそうにないので、これからはちゃんと結月には報連相をしようと思った。
「……何見せられてんの俺」
一方で、1人置いてけぼりの伸太郎はそう零すのだった。
*
翌日を迎え、2回戦を今か今かと会場で待ち侘びる観客の前にジョーカーが現れる。彼は両手を広げ、大きく息を吸って挨拶した。
『ごきげんよう皆様! 本日も良いお日柄でございます! それでは早速、2回戦の特別ルール発表と参りましょう!』
逸る観客の気持ちを察し、ジョーカーは手際良く進行していく。いつものセルフドラムロールも健在だ。
さて、今日の勝負はここから始まると言っても過言ではないだろう。特別ルールとは、それだけ重い意味を持っている。1回戦は単純だったが、2回戦は
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