出雲紺子の過去
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ろ変わっているのは年齢だけであるということ。あれ以来自由が自分のものになって嬉しかった。しかし母親が死んだことに心を痛めていることだけは変わりなく、明治時代中期になっても夜になると母親のことを思い出しては泣きながら眠りについていた。
ある日の雨の中、妖狐は今日も生きていくために残飯を探していたところ、中年の男が声をかけてきた。
中年「今日も残飯探しか。精が出るねぇ」
妖狐「あんた、誰?私を殺すつもりだったら承知しないよ」
声をかけた中年に妖狐は殺意がこもった表情で睨みつけながら短刀を向けたが、中年は落ち着かせようと優しい声をかけながら頭をそっとなでた。
妖狐「………?」
すると不思議と安心感を持ったのか、そのままスヤスヤ眠りについてしまった。
中年は妖狐を抱きながらどこかへ行ってしまった。
妖狐「ここは……」
中年「おっ、目を覚ましたか」
目を覚ました妖狐は見覚えのない天井を目の当たりにした。隣にはあの中年の男がいた。
中年「俺は出雲惣一。この家の者だ」
妖狐「惣一…………?」
惣一「お前がボロボロの服を着てゴミを漁ってたところを話しかけてきたら、まさか短刀を持って襲ってくるとはな。何があったか知らねぇけど、安心しろ。お前を傷つける奴はいないから」
惣一と名乗る男は笑顔を見せた。妖狐は部屋を見回してみる。
妖狐「…………ここ、どこ?」
惣一「ここは俺の家。ボロボロの服を着ていたが、名前とかあるのか?」
妖狐「名前……ない」
惣一「名前ないの!?ウッソだろ、平民にはちゃんと名前がつけられてるってのに……親とかいる?」
妖狐「死んじゃった………雷に打たれて………」
惣一「え?」
顔を覗き込むと、妖狐の目には涙が溜まっているのがよくわかった。そして両手で顔を覆い、泣き出した。
妖狐「あ……あああ……私が……………私が……………」ポロポロ
惣一「あああああ待って待って待って!?泣くな泣くな、落ち着いて!?俺これでも息子と娘が―――――」
妖狐と惣一の話し声を聞いていたのか、2人の子供が入ってくる。惣一の言う通り、1人は息子、もう1人は娘だった。
娘「もー、うるさい!黙らないとえぐる……!?」
息子「お父さん、一体どうした…の……!?」
惣一「あ」
絶句する2人。惣一と妖狐を見ながら沈黙する。
娘「…………ちょっと貴彦?警察呼んできて」
貴彦「お、おう」
惣一「ち、違う海里!!誤解してるけど、この子を泣かせてるわけじゃないんだ!違うんだーっ!!」
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