ターン40 幕開け、あるいは幕引き
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たはずだ、違うかね?」
「……!」
そこまで言われてようやく、鳥居が自分のミスに思い至って息を呑んだ。
こんな簡単なことすらも、使い手である彼自身が気が付かなかったとは。悔やんでも悔やみきれない後悔、自分自身への深い失望、絶対に負けられないこの一戦で致命的なミスをした恐怖……あらゆる高濃度の感情が一緒くたに押し寄せて、怒りと憎しみが燃え滾っていた彼の心を一瞬で暗闇の底に突き落とす。
「場には4体の魔界劇団、それだけいれば私のグランドマンの攻撃力は4200から200まで落ちることになる。例え初撃をシグナル・レッドで止めようと、ビッグ・スターとデビル・ヒールでイゾルデとグランドマンに攻撃していれば?その合計ダメージは、軽く4000を超えていたろうねえ」
絶望が色濃く滲み出た鳥居に、駄目押しとばかりに事実を列挙するだけの言葉が重くのしかかる。
そのまま今にもその場に崩れ落ちそうな彼を寸前で止めたのは、横にいる赤髪の上司の言葉だった。指摘された事実の大きさを前に小さく汗を垂らしながらもいつも通りに、いやいつも以上に不敵で皮肉で、そして何よりも頼もしい口の端を歪めての笑み。
「なーるほどなあ、確かに御説ごもっとも、仰る通りだよ爺さん。鳥居、お前もそこはマジで反省しとけよ……だがな。アタシは今の話を聞いて、少しばかり安心したぜ」
「え?」
「ほう?」
すがるような視線と好奇の表情の両方に注目されながら、口の端を舐めて唇を湿らせる糸巻。そのトレードマークでもある赤い髪をかき上げ、後ろになびかせながら老人の顔をまっすぐに見据えた。
「アタシは正直なところ、ちょっと疑問に思ってたんだ。このターンの最初に爺さんがぶっこんできた特大の爆弾。確かに衝撃的な話だったのは間違いないさ、だがな、なんであのタイミングでそんな話をする必要がある?ってな」
視線を一切逸らさず瞬きもしないまま、ひとつひとつの言葉をかみしめるように老人へと叩きつける赤髪の夜叉。グランドファザーの表情は、好奇の笑みをたたえたまま変わらない。
「なんのことはない、正体見たり枯れ尾花、さ。要するに爺さん、かなり崖っぷちだったな?手札のシグナル・レッド1枚とセットした王宮の勅命だけじゃ、鳥居がミスしない限りどうあがいてもこのターンを耐えきれそうにない。つまり、生き残るためにはなんとしても鳥居にミスさせなくちゃならない。だが、この演劇馬鹿の仮面を剥ごうってのは並大抵のことじゃない。それでもそいつを成立させるために、あれぐらいとんでもない秘密を明かさなくっちゃいけなかったわけだ。違うか?」
「……ひひっ、さすがに長い付き合いだけのことはあるね、糸巻の。できれば老獪、と言って欲しいものだがね」
「はっ、物は言いようだな?老害、の爺さんよ。なんてことはねえ
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