ターン40 幕開け、あるいは幕引き
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論やデュエルモンスターズ撲滅派の政治家どもへのガス抜きを行いつつテロリスト側の増長を防ぐ。このバランスを取り続けるのは、随分苦労したものだよ」
「そんな、自分勝手な都合だけで……!」
「そう熱くなりなさんな、糸巻の。それに、そう大きく出れる立場じゃないはずさね。なにしろ私が定期的にマッチングした試合の情報を流してあげたからこそ、デュエルポリスだって飯が食べれていたんだからね」
「ふ……」
「ふざけんな!」
息つく暇もなく明かされた真実に、呆然としてから強く拳を固める糸巻。だが彼女の口から罵声が飛び出すより先にそれよりも早く、そして深く激昂した鳥居がごう、と響き渡るほどの大音声で叫んだ。
予想外の出来事に口をつぐむ糸巻に目もくれず、演劇者としての仮面が外れるほどの怒りの感情を隠そうともしないとおよそ普段の彼らしくもない姿をあらわにしたまま、変に力がこもるあまり小刻みに震える指で老人を指し示す。
「アンタが……アンタのせいで!アンタは確かにデュエルポリスとテロリスト、その両者だけならバランスをとっていたかもしれない。だがな、デュエルモンスターズ界はそれだけじゃなかったんだ!」
13年前のあの時、全てが狂った瞬間からずっと積もり続け、しかしそれを吐き出すことなく自分の中に呑み込んできた感傷。完璧に隠し続けてきたはずのそれが、今になって時を越え彼の中から溢れつつあった。止められない、止められない。
「13年前のあの日以来どこに行っても俺たちの……デュエンギルドの演劇は断られ続け、仕方なくそこらの河川敷や公園で演っても観客も、拍手も何もない。いや、それだけならまだよかったさ。石を投げられ、通報され、この町から出ていけデュエリストどもめ、だなんて唾を吐きかけられたりもした。それでも俺たちはみんな自腹で道具の手入れを続け、台本を用意し、デュエルの腕を磨いてきた。なあ、アンタにそんな気持ちがわかるか?いつの日かデュエルモンスターズのことを笑って語れる日が来たらまた復活公演しよう、そう言いながら最後の最後、どうやっても立ち行かなくなってサラ金どころかヤクザですら一銭の金すら貸してくれなくなるほど借金漬けになるまでいつの日か、いつの日かって泥をすすって生きてきた俺たちが、アンタの目には見えていたのか?」
「……」
誰も、何も言わなかった。七宝寺は当然だが、糸巻にすら明かしてはいなかった鳥居浄瑠という男の過去。金、金、金、カネ。常に夢が金に対し敗北し続けてきた、地獄の10年弱。
膨れ上がる一方の借金を背負うため、ある団員は家を、家財道具の全てを二束三文で捨てた。ある団員は自分の借金や違法スレスレな金稼ぎのリスクを背負わせないためにと、泣いて呼び止める妻子に本人も泣きながら離縁状を叩きつけた。
鳥居本人が今こうして五体満足で
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