ターン40 幕開け、あるいは幕引き
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。果たして、グランドマンは上にいた。天井すれすれまで飛びあがり、背中からは先ほどまで影も形もなかったはずの純白の翼、天使の両翼が生えている。それが、英雄の飛行を可能にしている。
「E・HERO オネスティ・ネオス。このカードを捨てることで、ヒーローの攻撃力は2500アップする。この意味が、分かるね?」
「くそっ……!」
子供に言って聞かせるような、優しさすらも感じさせる口調。そして戦場では、上空に退避して必殺の一閃を回避したグランドマンがゆっくりと反撃に打って出ようとしていた。両手の銃を構え、いまだ剣を振りぬいた姿勢から立ち直りきれていない戦神の無防備な背中に狙いをつける。
「互いのモンスターが攻撃表示だった場合、より攻撃力の高い側がバトルに勝利する。これがこのゲームのルールだよ、糸巻の」
身を捻り体の前に剣を構えて、正義を自称する英雄の弾丸をどうにか防ごうとする戦神……しかしそれよりもなお早く、その引き金は絞られた。
戦神−不知火 攻5500(破壊)→E・HERO グランドマン 攻3700→6200
糸巻 LP500→0
「……残念だねえ、糸巻の。久しぶりに、真剣な勝負がしたかったんだが。先のターンにそっちの若いのをかばったせいで、たった700のダメージも受けきれないとは」
「い、糸巻さん!」
気が付いたときには、鳥居はすでに駆け出していた。がくりとその場に崩れ落ち、膝をつく糸巻の傍らに屈みこんで肩を貸し、その体をどうにか受け止める。まるで死体を担いでいるかのような嫌な重みと感触は、それだけ彼女自身に自分の体を支える力がないことを如実に表していた。
「起きてくださいよ、糸巻さん!」
「耳元でわーわーがなるんじゃねえ、このタコ……」
いつも通りに口は悪いが、声音にはまるでいつもの覇気がない。のろのろと、普段の彼女からは考えられないほどじれったい動きで鳥居を押しのけようとして……それすらも叶わず、むしろ中途半端にバランスが崩れたことでがくりと前につんのめる形になった。それでもまた立ち上がろうとして倒れ込み、弱々しく舌打ちする。
「はっ、ざまあないな。負けるのなんて、少なく見積もっても13年ぶりだ……アタシはこの13年間、ずっと死神に好かれてた。あんなに負けたかったのに、どうしても勝っちまってな」
「糸巻さん、無理しちゃダメっすよ……少し動かないで、しばらく」
「上司の命令だ、黙って聞いとけ。いいか、鳥居?爺さんはグチグチ言うだろうしお前もお前でどうせまたうじうじするだろうから気にすんなとはアタシも言わねえが、お前これ以上デュエルに私情持ち込みやがったら承知しねえからな」
「糸巻さ……」
「返事」
今にも倒れ込みそうで、焦点もほぼ合っていないような目。最後の力で首を起
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