ツェルトバースデー2021
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射撃の腕は鈍っていないらしい。それを確認できただけでも満足だったが、なにより景品を受け取るセレナの顔がとても眩しかったのが印象的だ。
それから、今度は3人で金魚すくいに挑戦。
その結果は──
「あーッ!?破れちゃいました……」
「セレナ、こういうのはゆっくり狙って素早く……ええッ!?嘘でしょ!?」
「二人の仇は俺が……って、流石に耐久力弱すぎないかこれ!?こんなんで本当に金魚なんか掬えるのかよ!?」
全滅であった……。
どうやら金魚をすくうのは、達人級の技を要するらしい。
しかし、釣れない釣りもまた思い出だ。どっかの映画でそんな話を聞いた気がする。
残念だったね、と笑い合いながら俺たちは、ヨーヨー釣りや型抜きなんかを楽しんだ。
初めてだったけど、俺は日本の祭りが大好きになったと思う。
ff
屋台を堪能した俺達が最後に立ち寄ったのは、祭り会場の中心に飾られた、大きな笹の木の下だった。
タナバタの概要は、既に翔から聞いている。
オリヒメとヒコボシのラブストーリーに端を発し、2人の逢瀬を祈りつつ、それぞれ男女の仕事を司る2人のご利益にあやかろうというものらしい。
宮中行事だった頃は詩……確かゴーシチゴーとかいう……和歌、だったか?
それを、捧げ物の目印として使っていた笹や竹に吊るしていたのが、大衆文化になるにつれて内容が変化。書道などを始めとした手習いの上達祈願から、今の『願い事を書いて吊るす』というものへと変わったらしい。
「ツェルト義兄さん、凄いです!」
「まあ、殆どは翔からの受け売りなんだけどな」
「でも、全部覚えて分かりやすく伝えるなんて、中々簡単に出来ることじゃないわ」
「日本について勉強になるし、なによりセレナにいい顔したいからな」
「あら、ツェルトったら」
セレナに聞かれないよう小声で囁くと、マリィはクスッと微笑んだ。
「願い事、何にしようかな……」
セレナは短冊を手に取ると、小首を傾げて悩み始める。
「願い事を書いたら、3人同時に見せるっていうのはどう?」
「姉さん、グッドアイディアです!」
「じゃあ、タイムリミットは五分くらいでいいな」
腕時計のタイマーを5分後にセットして、用意されている鉛筆を握る。
願い事……願い事か……。
浮かぶ願いは色々あるけど、一番強く、一番ハッキリと、真っ先に浮かぶ願いは……
やはり、あれしかないだろう。
サラサラ、サラリと書き綴り、名前を記すと筆を置く。
丁度タイマーが鳴った頃、隣の2人も筆を置いた。
「それじゃあ、せーので見せますよ?」
「OK。いくわよ」
「よーし……」
3人で向かい合うと、短冊を指先で握る。
「「「せーのッ!」」
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