第十六話 はじめての時その十四
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「今はな。そのうちわかるで」
「わかるって。やっぱり太ることは」
希望にとってはトラウマだった。かつて散々、あの振られた時も言われたことをどうしても思い出してしまう。過去だがそれでもだ。思い出すとそれだけまだ辛かった。
だからどうしても今の二人の言葉には頷けなかった。しかしだった。
二人はそんな希望にだ。今も優しい声でこう言ったのだった。
「それで御飯の後やけれどな」
「葡萄あるで」
「あっ、葡萄あるんだ」
葡萄と聞いてだ。希望はまた喜びの声をあげた。彼は果物が好きだ。その中でも葡萄はかなり好きな方だ。それで笑顔になって応えたのだ。
「じゃあ後で洗って」
「もう洗ってるで」
「それで冷蔵庫に冷やしてるで」
「うわっ、そこまでもうしてくれてるんだ」
そう聞いてだ。希望はさらに晴れやかな顔になった。
「有り難う。じゃあ食べ終わったらね」
「それも食べや」
「物凄く美味しいで」
「うん、じゃあね」
希望も二人の言葉に頷いてだ。そうしてだ。
食べ終わってその葡萄、見事な明るい緑のマスカットも楽しんだのだった。彼は今は何をしても幸せだった。その中で部活、写真部にも入った。
写真部の部室に昼休みにいてだ。こう一緒にいる真人に言った。
「ねえ、お昼はね」
「ここにいてくれますか?」
「うん。有り難う」
笑顔を真人に向けてだ。希望は彼に言ったのである。
「部活にも誘ってくれてね」
「部活は今までは興味なかったですよね」
「なかったよ。全然ね」
彼の学園生活ではなかった。それも全くだ。
「部活っていうと体育会系でね」
「それしかイメージはなかったですか」
「お父さん。あの人ね」
「あの人がですか」
「うん。学生時代野球をやっていてね」
それでだというのだ。その彼の父がだ。
「部活はスポーツだ、それで男を鍛えろってね」
「そうでないと部活でないと仰ってたんですか」
「ずっとね。そう言ってたんだ」
父のことはだ。彼は暗い顔で述べた。その部室の中で。
「男ならとかね。常にね」
「男かそうかというのは」
「間違ってるよね」
「男か女かという言葉は僕は嫌いです」
真人は彼にしては珍しくやや否定的に述べた。そうした所謂体育会系的な考えに対してだ。
「よく根性見せろとか言ってそれで御前は男か、とか言う人いますよね」
「いるね。そういう人は」
「そういう人は好きにはなれないです」
「それは間違ってるからかな」
「男か女かではなくです」
そうした観点ではなくだ。大事なのは何かというのだ。
「人としてどうかであって」
「男だ、女だ、っていうのは」
「視野が狭いです
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