風鳴翔バースデー2021(ヘタ翔ver.)
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並行世界にて──
「翼さん……」
「ん?どうした、立花」
翼は名前を呼ばれて振り返る。
声の主は後輩の立花響。黄色い髪留めに夏物のパーカー、茶髪に少しタレ目な少女。
本来の立花響とは異なる人生を辿る、もう一人の立花響である。
「立花?」
「その……翼さん、ちょっと聞いても……いいですか?」
何やら口ごもる響に、翼は快く頷く。
「私に答えられる事なら、何でも聞いてくれ。力になろう」
響は少し躊躇って、しかし翼に真っ直ぐ見つめられると、やがてポツリと呟いた。
「翔の好きな食べ物……教えて欲しいなって……」
「………………ほう?」
この時、翼の表情が一瞬にして緩んだのは語るまでもない。
ゆっくり話を聞くため、翼は響を自販機の前まで連れていくのだった。
「──なるほど。翔の誕生日が近いから、プレゼントとして手料理を食べさせてやりたいと」
「うん……。わたし、料理は出来るけど、人に食べさせたことってあんまり無くて……。翔にはいつも美味しいご飯、食べさせてもらってるし、お礼するならこれかなって」
立花の話を聞き、私は心の中で涙していた。
あの立花が、だ。あのツンケンしてて素直じゃない、誰にも懐かぬ一匹狼だった立花が、私の弟の為に手料理を振舞おうとしているのだ。
立花は確実に前へと進み、成長しつつある。
姉として、先輩として、ここまで嬉しいことは無い。
なればこそ、私はそれに全力で応えよう。
立花と私の弟、翔の幸せのために。
「そうだな……。翔の大好物なら──」
ff
「響ちゃん、相談って?」
呼び出された私は、響ちゃんと学校近くのカフェに来ていた。
なんでも、大事な相談があるらしい。いったい何だろう?
「クリス先輩……料理とか、できる?」
「料理?もちろん、出来るけど?」
「実は──」
ふむふむ。
翔くんの誕生日プレゼントに、手料理を作って食べさせてあげたい……と。
だけど今まで、誰かに食べてもらうための料理は、作った事がないから、ちょっと不安で ……?
「だから……普段から、好きな人の為にお料理してるクリス先輩に、練習……付き合ってもらいたいなって……」
なるほど……。響ちゃんにとっては、初めての挑戦なんだ。
そういう事なら、先輩として、一肌脱いであげなくっちゃ。
「うん、任せて」
「本当に!?」
「他でもない、響ちゃんの頼みだもん。お料理の先生は、わたしに任せて」
「先輩……ありがと」
照れくさそうな響ちゃん、可愛い。
後輩に頼られる事、あんまりないから、嬉しいな。
「それで、誕生日はいつなの?」
「来週だよ」
「じゃあ、今度の日曜日、練習会し
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