第十六話 はじめての時その十三
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二人のその言葉を受けてだ。こう言った。晴れやかなものに戻った顔で。
「僕も。今よりももっとね」
「笑顔になるんやな」
「明るくなるんやな」
「なるよ。家でもね」
そのだ。二人がいてくれている家でもだというのだ。
「絶対にね」
「なりや。人は明るくならなあかんで」
「楽しく生きなあかんねんで」
「そうだよね。本当にね」
確かな顔でだ。希望はその今でもこれ以上はないまでに美味しい御飯を食べながら言った。
そしておかずの筑前煮の鶏肉も食べる。それは。
「凄く柔らかいね」
「柔らかいか?」
「美味しいねんな」
「柔らかくてとても美味しいよ」
ただ美味しいだけではなかった。その味は。
醤油の味もよく滲み込んでいてだ。そのうえでだ。
深いものがありだ。こう言えたのだ。
「これ何時間も煮たんだね」
「お肉はよく煮たらええねんで」
おばちゃんが優しい笑顔で答えてきた。
「蓮根かて人参かてな」
「あっ、確かにね」
その蓮根や人参を箸に取ってみるとだ。確かにだった。
柔らかかった。どちらもだ。まるで蓮根や人参ではない様に。
そして口の中に入れてもだ。そこでもだった。
「やっぱり柔らかいよ」
「そやろ?ほんまに何時間も煮たさかいな」
「ずっと煮てんで」
「そこまでして作ってくれたんだね」
「希望が美味しいようにな」
「そうしてみたけれど。どないやろな」
「凄いよ」
感想は最初はそこからだった。
「凄く美味しいよ」
「そやったらどんどん食べてや」
「沢山あるさかいな」
「何か美味し過ぎてね」
それでだとだ。また言う希望だった。
「また太るかな」
「あっ、よお言わんわ」
「幸せ太りかいな」
「そうなるかな」
「なるで。それでな」
「それはええことやねんで」
「太ることが?」
これは希望にはわからないことだった。彼はこれまで太っていることで散々馬鹿にされてきた。そのことで苦しんでもきた。だからこのことはとてもだった。
理解できずにだ。こう言うのだった。
「いいことなのかな」
「そやで。苦しんで痩せるよりな」
「楽しく太る方がええねんで」
「そうなのかな」
そう言われてもだ。やはりだった。
希望には理解できない。それで首を捻ってこう言った。
「太ったら駄目じゃないかな」
「まあそのこともわかるで」
「そのうちな」
「太るのもいいことだって?」
「心が太ったらええねんで」
おばちゃんがだ。首を捻り続ける希望にこう言った。
「それはええねんで」
「心がって」
「その心が太ったのが身体に出るんやったらな」
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