悪意なき殺意
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、スイムスイムの目を見上げた。
彼女の目は、紗夜を、ましてやココアを見てはいない。
彼女が捉えているのは、虚空。
今から手にかけようとする相手の顔も、何も見てはいない。
ただ、作業的に、その刃を振り上げた。
「やめて!」
スイムスイムの刃が紗夜の首を切り裂くよりも先に、ココアは彼女の体にタックルする。だが、スイムスイムの体は、全てが水で出来ており、ココアの体が簡単に通過、紗夜とは反対側の廊下に投げ出される。
「えっ!?」
現実ではとてもありえない現象。それに目を大きく見開いたココアへ、スイムスイムの殺意が自らに向けられる。
「いけない!」
紗夜はすぐそばにあった消火器を手にかける。その重さに腕を一瞬持っていかれながらも、それを投影。
「……」
何も語らず。スク水の少女は、体を通過した消火器など気にも留めず、ただ目標を紗夜からココアに変えただけだった。それだけは間違いない。
「邪魔」
彼女が語った、それだけが主な理由。
スイムスイムは、振り回した武器……ルーラをココアへ向けた。
「お姫様になるために……悪い人はやっつける」
彼女が言っていることは理解できない。だが、彼女が殺意をもって襲い掛かっているのは紛れもない事実だった。
「う、うわああああああああああ!」
悲鳴を上げながら、ココアは___いつの間にか取り出した、白い日本刀型の取り出した。おそらくはココア自身も知らないであろう、それの使い方。刀身部分から眩い光を放ちながら、それはココアとスイムスイムを包んでいく。
「……っ!?」
眩さに目を瞑った紗夜は、目の前の景色の変化に愕然とした。
殺意の刃を振り下ろしたスイムスイムはそのまま。壁に張り付いたままの紗夜も変わらず。
ココアがいた場所に、銀がいた。
「何……? あれ?」
思わずそう口走ってしまう。
人の姿形こそしていれど、その顔には人間のような筋肉はない。仮面のような張り付けられた表情と、胸元にある唯一の赤いT字にも似た紋章が特徴だった。
銀は紗夜を少しだけ振り向くと、スイムスイムとの戦闘に入る。だが、狭い学校の中では、どうしても周囲に被害が出てしまう。廊下の壁が砕かれ、窓ガラスが割れていく。
「や、止めなさい!」
強く出たいが、恐怖に体が引き攣ってしまう。
だが、それを見てか見ずか、銀の右腕に光が宿る。銀はそのまま、拳を突き上げた。
すると、淡い光が廊下の天井がオレンジに染まっていく。
「待ちなさい!」
紗夜は二人を止めようと駆け出す。だが、その時紗夜は気付かなかった。
オレンジの輝きが、ドームのように広がっていく。その中に、足を踏み入れてしまったことに。
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