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艶やかな天使の血族
3部 公人と私人
17話 紅き血
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 あの時と同じだよ。モビルスーツの開発初期。血まみれになったテストパイロット達。それを看取る自分。
 月のグラナダでもそうだった。各部隊から選りすぐりのパイロット達が血まみれになって命を散らす光景。それを看取る自分。
 一体、自分は幾つの命が散るのを見た?看取ってきた?数えきれない数の犠牲者。
 くそ…。こんな時にこんな事を想い出すなんて。怒りとか、そんなものじゃない。
 悔しいとか、そんなものじゃない。
 暗い何かが、蝕む。
 この身を何かで埋めないと、虚無感で支配されてしまう。
 でも、何で埋める?
 物か?金か?物欲じゃない。 
 形となるものはいい。
 何で埋める?
 ……自分自身に無理矢理、抑えられている悪魔が囁いた。
 快楽だよ……。淫楽だよ……。
 それの為に、あの花を虜にしたのだろう?
 今こそ、あの花を独占する時が来たのだ。
 あれはお前のものだ……。
 思いのままに、虜にしてやれ。
 お前の欲望を晴らせ。
 

 ……俺の中の悪魔よ。
 それをしてもいいのか……?
 彼女を傷つけていいのか……?
 

 いいに決まっているだろう?
 もう……彼女の中にはアイツラはいない。
 お前だけなのだ。独占しているんだ。
 一人で貪っていいんだ……。
 

 そんな事をしてもいいのか?
 
 
 今更、何を迷う?
 この時の為に、種を蒔いたのだろう?
 なら……今すぐ貪れ。
 あの花の蜜を寄越せ。
 

「……」
「どうしたのですか?レム少佐?」
「ここの所、徹夜でね。ろくに休みも取ってないのだ。私はとりあえず、上がらせて貰うよ」
「レム少佐?」 
「1週間戦争も、ルウム戦役も、終わったし、軍からしばらく休めと言われている。私は上がるからな」

 そして、あの花を味わうのだ。 
 俺の中の悪魔が、意志を持った瞬間だった。
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