第六十八話
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出し、来ていた衣服と交換した。
「ふぃ、さっぱりした」
湯上りに『勇者の道具袋』から、以前リオとヴィヴィオにあげたのと同じパヒュームを取り出してシュッとひと吹き。
一瞬で筋力疲労が嘘のように回復する。
こんなドーピングのような事はしたくないんだけど、仕方ないか。
汗も引いたし、十分温まった。…まぁ、これから帰りも寒空の下走って帰るのだが…
さて、久遠を探して家に帰るか、と旅館の通路を歩いていると廊下の手すり(バリアフリーの為に改良したようだ)に掴まりながらよわよわと千鳥足のようにふらつきながらも懸命に歩いている少女が眼に入る。
髪の毛を両サイドで纏め上げた十三、四歳ほどの少女だった。
一歩一歩ゆっくりと進む少女の横を通り過ぎようかとした時、少女がふらつき、支えていた手にも力が入らないのか手を離してしまったようでこちらに向かって倒れてくる。
「きゃっ」
「おっと」
倒れてくる少女を俺は苦も無く受け止める。
少女は受け止められた事に気が付くと目を開けてこちらを振り返った。
「ご、ごめんなさい!あたし、まだ…その、か、体が…え?」
振り返った少女のおもむきに俺は見覚えがあった。
髪の色も、瞳の色も違う、けれど…
「シリ…カ?」
少女も俺に心当たりがあるようだった。
「アオ…さん?」
驚き、声を詰まらせる俺達を不審に思ったのか、廊下の端の方から女性が走りよってくる。
「珪子!大丈夫」
俺は支えていた少女をその女性に任せ、手を離した。
「あ、お母さん。だ、大丈夫だよ」
どうやら彼女の母親のようだった。
「娘を助けていただいて、ありがとうございます」
「いえ、たいした事じゃありませんよ」
「あのっ!お母さん、ちょっといい?」
「何?珪子」
「あたし、この人とお話ししたい事があるの」
「そうなの?」
母親は良いかしら?と言う意味を込めた視線を俺に向けた。
「俺も話したいことがあるので、向こうのカフェテリアに行きませんか?」
カフェテリアの席に座ると母親は適当に飲み物を取ってくると席をはずした。
改めて目の前の少女を見る。
「…シリカ、だよね?」
「その名前を知っているって事はアオさんって事ですよね?」
「ああ、本名は御神蒼、年齢は…もう19になったかな」
互いに知り合いのはずなのに自己紹介とは、なんかくすぐったい。
「あたしは綾野珪子って言います。…いままでいっぱい会話をしてきたはずなのに、こうして自己紹介をしてるのって、なんか変な感じですね」
それはあの世界のアバターが現実の容姿を再現したからだろう。
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