かしまの噂
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しまさんとやらが本当に出てこない事なんて分かってるけど、何となく嫌な気分になるじゃん、その三日間。こっちは一方的に聞かされただけなのに、なにか余計な義務を課される感じが嫌」
「それな。義務を課すんだよねぇ、あいつらは」
頭上から、聞き慣れた祟り神の声が降って来た。首を反らすと、頭上にニヤつく奉の顔があった。厚手の羽織を肩掛けにして、下はグレーのワイシャツのみ。まだその恰好では寒かろうに。
「珍しい。自分から来てたのか」
履修登録の締め切りはまだ先だ。どうせ自分で選択科目を決める気はないのだろうから、俺が適当に書き込んで提出しておくつもりでいたし、授業が本格的に始まるまでは声を掛けなくてもいいか、と踏んだのだが。
「野暮用があってねぇ。…かしまさん、って云ったねぇ」
言葉を切って、奉は俺の隣に腰を下した。今泉と奉に挟まれる形だ。なにこの極端な三人組。
「この『話を聞いたら○日以内に、○人にこの話を広めないと祟りがある』というスタイルの都市伝説な」
その全てが、ある一つの目的によって作られているんだよねぇ。そう呟いて、奉はくっくっと笑った。
「広める…その一点に尽きるんだよねぇ」
話の内容なんかどうでもいいんだよ、ただ『広める』。だからこのパターンの話は、中身がスッカスカなんだよねぇ。奉はそう云って珈琲のプルタブをかしゅ、と上げた。
「作り手の醜いエゴが丸見えだ。そんなトコが気に入らないんだろ?お前」
「そ、そこまでは…」
似たようなことはうすぼんやりと考えてはいたけど、そこまで思っていたわけじゃない。
「けんもほろろだなぁ、玉群は」
だるそうに笑いながら、今泉が顔を上げた。また定型の怪談が流行ってるぜ、くらいの噂話をしたかっただけで、今泉にとっては噂の本質も真偽もどうでもいいことなのだろう。
「なぁ、玉群。野暮用ってなに」
今泉は唐突に振り返って、奉に声を掛けた。ふむ…と小さく呟いて顎に軽く手をあて、奉が今泉を見下ろした。
「…お前で、いいか。結貴じゃ話にならんからな」
「失礼だなてめぇ」
「今話していた、かしまの噂についてよ」
俺の存在を完全に無視して、奉が続ける。
「今回は、どんな噂になっているんだ?」
成程。学内の噂に疎い俺では話にならないわけだ。云い方は気に食わないが、理解はした。今泉は少し視線を宙に泳がせ、…すごく、宙に泳がせ…まだ、宙に泳がせ
「………まだ、まとまらんのか?」
奉が苛立ちを隠そうともしない声色で急かした。
「ってか、只の都市伝説だろ。真面目に聞いてないよそんなの」
っち、みたいな音が奉の口角から洩れた。こいつ最悪だ。舌打ちしやがった。
「あー…今回のかしまは、男?女?」
仕方ないので俺が話をまとめることに。
「ああ、女だよ確か」
即答だった。
「生贄にさ
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