暁 〜小説投稿サイト〜
モンスターハンター 〜故郷なきクルセイダー〜
砂漠編 喧嘩のついでに町を救った男達
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様子に、ドラコはまだ自分が知らない「何か」があるのだと察していた。ディノだけはこの時、すでに気付いていたのである。
 安住の地を求めてオアシスを占拠していた、このドスゲネポスは。とある他のモンスターに住処を追われ、この近辺にまで逃げ込んでいたのだということに。

「……」

 そして、このドスゲネポスの背に深い爪痕を残した、そのモンスターの気配にも勘付いていたのだ。が、殺気を辿るディノの視線がその姿形を捉えたと同時に――ドスゲネポスを追いやった「牙獣種」の影は、砂塵の彼方に消えてしまった。
 その一瞬でも「金獅子」ことラージャンではないことを察したディノは、唯一残された可能性に辿り着き、独り目を細めている。

「……いずれは奴とも、決着を付けねばな」

 その宣言通り。ディノはこの数年後、今回の事件の真の元凶である「砂獅子」ドドブランゴ亜種と、雌雄を決することになるのだが――それはまた、別のお話である。

「……あ、あの〜、すいませ〜ん……」
「え? あ、ハイ」

 そして。巨大なドスゲネポスを仕留めた直後……とは思えないほどにあっけらかんとしているアダイト達に、微妙な表情を浮かべる町長の娘が、おずおずと声を掛けていく。
 そんな彼女の方に振り返ったアダイトの表情は、実にキョトンとしていた。ドラコとディノも、何事かと顔を見合わせている。

 ――この後。ようやく状況を理解したアダイト達3人はギルドへの報告書を纏めつつ、砂漠の町で数日に渡る歓待を受けたのだが。
 町民達に見送られながら町を発つ日まで、ただひたすらにむず痒そうな表情を浮かべていたのだった。そんな彼らの様子に、町長の娘はくすくすと苦笑していたのだという。

 その一方で。彼女はディノの怜悧な横顔に、仄かな甘い視線を向けていたのだが。その眼差しの意味に当人が気付くのは、何年も先のことになるのだろう。
 武人として、狩人としての真の強さを求める彼にはまだ、色恋沙汰は早過ぎるのだから。

 ◇

 余談だが。この件を契機に、砂漠の町にはハンターを立ち寄らせるための「集会所」が新設されることになったらしい。かくしてこの町は1人の犠牲者も出すことなく、モンスターという災厄に抗する術を得たのだった。
 そのきっかけになった今回の戦いも、「伝説世代」の功績を綴る英雄譚の1ページに数えられているのだが。この話題が掘り起こされるたびに、とある3人の男達はなんとも言えない表情を浮かべていたのだという――。

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