特別編 追憶の百竜夜行 其の終
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ウツシと固い握手を交わし、最後の1人として旅立とうとしていたアダイトも、同様であった。彼が去り際に残した「置き土産」に、親友は複雑な表情を浮かべている。
――出発の直面。アダイトは僅かでも砦の修繕費用になればと、それまで自分が集めていた素材の類を全て売り払い、里に寄付していたのだ。
「オレもお前も、自分が信じたやり方で戦っていく。それが誰かのためになるなら、それで良いじゃないか」
「……あぁ。君は、そういう男だったね。なら俺は……せめてこの里から、君の健闘を祈らせてもらうよ。1人の友として、ね」
「おう。……またな、ウツシ」
里の窮地を救われたことに加え、そこまでされてしまったウツシは何も言えず、笑顔を浮かべて立ち去っていくアダイトの背を見送ることしかできずにいる。
「……アダイトや皆の衆から受け取ったものが、お前の中にあるのなら。今度はお前が、それを『次代』に繋いで行くのだ。お前ならそれが出来ると、俺も信じている」
「……はい。その期待、必ず応えて見せます。それがきっと、彼らに報いるただ一つの道なのですから」
そんなウツシの肩に手を置き、共に戦友の旅立ちを見届けていたフゲンも。「次代」に希望を残したアダイト達に応えねばと、静かに、そして熱く、決意を新たにしていた。
――そして。この日から何年もの歳月が流れ、「翡葉の砦」がついに完成間近となった頃。
かつて、カムラの里を守るべくウツシと共に戦った、精鋭揃いの同期達は。「黄金」という言葉すら超越する「伝説世代」として、自分達の雷名を世に轟かせていた。
大陸全土に知れ渡るほどの「生ける伝説」となった彼らの存在は、モンスターの脅威から幾つもの国々を救ってきた英傑として、その武勇伝と共に今もなお語り継がれているのである。
ただ、1人を除いては。
◇
豊かにして艶やかな、山紫水明の地――カムラの里。その集会所にて独り佇むウツシは、手摺りに身を預けながら微笑を浮かべ、1枚の手紙に視線を落としている。
「……変わらないな、彼も」
同期達を総動員して臨んだあの戦いから、何年もの月日が経った今も。その優しげな瞳は、当時のままであった。
ハンターとしての実績と年季を重ね、教官職を任されるようになったウツシは、見目麗しく逞しい青年へと成長している。
そんな彼は、「伝説世代」と崇められている同期達の活躍を誇りに思いながらも――「次代」に繋がる「愛弟子」の修行に勤しむ日々を送っていた。あの日誓った通り、彼らの尽力に報いるために。
「あら……そのお手紙、もしかしてアダイトさんからですか? うふふっ、懐かしいですね……何年振りでしょうか」
「ふふっ……ヒノエ、これはアダイトからじゃないよ」
そ
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