特別編 追憶の百竜夜行 其の十二
[2/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
まれた隻眼の雌火竜は、憎悪に満ちた凶眼でナディアを射抜く。だが、彼女という「姫君」を守る紫紺の「騎士」は、すでにその懐に入り込んでいた。
「……ナディアを殺ろうというのであれば、まずは俺が相手になるぞ」
ガルルガシリーズの防具を纏い、颯爽と滑り込んできたレノの鬼斬破は。鮮やかな弧を描いてリオレイアの両脚を切り裂き、その巨躯を転倒させている。
そこからさらに、瞬きする間もなく。流水の如き刀捌きで雌火竜の全身を切り刻み、最後には尻尾まで斬り落としてしまうのだった。
すれ違いざまに、忌々しげに自分を睨むリオレイアと視線を交わしていた彼は。普段と変わらない怜悧な面持ちのまま、こめかみに青筋を立たせている。
「……挑発的な目はやめておけ。俺はこう見えて、気に食わん奴には容赦がないタイプだ」
訓練所時代から、アダイトやディノにも並ぶ成績優秀者だった彼の剣技は、実戦を重ねるに連れてさらに冴え渡っていたのである。そんな彼も、ヤツマの献身には敬意を評していた。
だからこそ。そんな彼を跳ね飛ばした挙句、嘲笑うような咆哮を上げていたリオレイアにも、静かな怒りと殺意を燃やしているのだ。
その闘志を宿して唸りを上げる、気刃斬りの乱舞。それを目の当たりにしたナディアは、同期達の中でもトップクラスの剣技に息を呑む。
そんな彼女が、ランスよりも真っ直ぐなレノの眼差しに射抜かれたのは、その直後だった。
「レノさん……!」
「ナディア。お前がアダイトのように……常に、誰かを守るために戦い続けるのであれば。俺は、そんなお前を守る剣となる。今はそれだけが、ヤツマの覚悟に報いるただ一つの道だからな」
「そ、そういうキザなセリフを真顔で言わないで頂けますか!?」
「……? キザかどうかは知らんが、俺は本気で言っている。へらへらしながら真剣な話をする奴などいるものか」
「もうっ……アダイトさんといい、殿方は良くも悪くも変わらない人ばかりですわっ!」
口説いているような文言を照れもせず、真剣そのものといった表情で言い放つレノの天然ぶりは、今に始まったことでもないのだが。訓練所時代から、その真摯な貌に心を揺さぶられてきたナディアは、頬を赤らめながらため息をついている。
「相変わらずお熱いねー、あそこのお2人さん! ……じゃあアタシはアツアツなカップルのためにも、お邪魔な奴を仕留めてやるとしますかッ!」
その様子を上空からニヤニヤと見下ろしながら、翔蟲の力で颯爽と空中を舞うカグヤは――ヒドゥンブレイズを振り上げ、リオレイアの片翼を狙い急降下していく。
「アタシの修行の成果、あんたで確かめさせてもらうよッ! どりゃあぁあぁあッ!」
その叫びと共に炸裂する、渾身の溜め斬り。彼女の全
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ