特別編 追憶の百竜夜行 其の十
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だ)
悪役になってでも、ヤツマを守ろうとしたことに後悔はない。だが、その選択肢が間違いであることは、もはや疑いようもなかった。
ディノも、信じ抜くべきだったのである。ヤツマなら必ず出来ると疑わなかった、アダイトやウツシのように。
(アダイト、ウツシ……必ず勝て! 勝って証明してくれ、ヤツマの強さを! そして……俺が間違っていたのだということを!)
「ディノひゃ〜ん、もっと触ってぇ〜……隅から隅までお薬塗ってくだひゃ〜い……」
「あらあら、ノーラ様ったらまたあんなにベタベタと……うふふ、全くもう、ふふっ……。ディノ様、よろしければ私が代わりましてよ? お望み通り、『隅々』まで塗り込んで差し上げますわ」
「ハッ! ク、クリスティアーネさんが……貴族令嬢にあるまじき表情に!? に、逃げて! ノーラさん超逃げて!」
傷だらけの拳を震わせて。ディノは周囲の喧騒に耳を貸すことなく、暗く淀んだ夜空を仰ぎ、よりきつく唇を噛み締める。
せめて彼らの勝利が盤石であることを、祈りながら。
◇
大物リオレイアの猛攻に晒されながらも、演奏を完遂しアダイト達を強化して見せたヤツマ。そんな彼が奏でた勇壮なる音色は、前線のすぐ近くまで来ていたウツシとエルネアにも響いている。
「ヤツマ……君の覚悟と信念、俺達にも届いたよ! その想い、必ず勝利に変えて見せるッ!」
「……こんな時に、邪魔な奴らばっかりワラワラとッ……!」
ヤツマの献身に胸を打たれた同期として、彼らはバサルモスとガルクに跨りアダイト達の元を目指していたのだが。その眼前に立ちはだかるジンオウガの電撃が、彼らの行手を阻んでいたのである。
正面衝突で押し負けてしまったウツシのバサルモスは、熱線を放ち薙ぎ払おうとするのだが――荘厳な外見に反した素早さで、雷狼竜はその閃光を軽やかにかわしてしまう。エルネアもガルクの上からモンテベルデを連射しているのだが、ジンオウガはその弾丸すらも容易く回避していた。
「ウツシ、ここは私に任せて先を急いで。アダイト達にはあなたが必要!」
「エル……わかった。君の言葉を信じよう、ここまで付き合ってくれた友としてッ!」
ガルクから颯爽と飛び降り、ジンオウガと真っ向から対峙するエルネア。普段の彼女からは想像もつかない力強い言葉に、その信念の固さを垣間見たウツシは、問答する暇も惜しむようにバサルモスを走らせていく。
「……行かせない。あなたの足止めは、私の仕事」
彼の後をつけ狙おうとする雷狼竜の足は、そこに撃ち込まれたモンテベルデの弾丸によって阻止されていた。自分の行手を阻むエルネアに狙いを切り替えたジンオウガは、忌々しげな貌で全身の電光を輝かせている。
「狙わせるものかァッ!」
すると、次の瞬間。そ
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