特別編 追憶の百竜夜行 其の六
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2人に狙いを定めていた。
「あ、ありがとうございます姉様……じゃなかった! クリスティアーネ、さん……」
「ふふっ、無理に訂正されなくても構いませんよ。私も妹が出来たみたいで、とっても嬉しいです。……だから、天国の『姉様』の分まで……必ずあなたを守り抜いてみせますわ」
自分を姉と間違えてしまうベレッタに微笑を向けていたクリスティアーネも、別人のような眼光で轟竜と睨み合っている。
ナルガクルガとティガレックス。かつてない強敵達と同時に戦うことになってしまったディノ達の頬には、冷や汗が伝っていた。
だが、その恐怖に飲まれては勝てる相手にも勝てない。武人の名門に生まれ、かつてはその道の後継者として育てられてきたディノには、それが痛いほど分かっていた。
故に彼は、少しでも有利に戦いを進めるべく。傷を負うことを覚悟の上で、再び攻撃重視の戦法を取ろうとする。今度は、ライバル達に対する焦りが理由ではない。
(あいつら……特にアダイトの奴なら、今の俺と同じことを最初から考えていたのだろうな。あいつは初めて会った時からお人好しで、バカで……正しかった)
どれほど傷だらけになろうとも、一瞬でも早くナルガクルガを倒して、ティガレックスに狙われているクリスティアーネとベレッタに加勢する。それしか、2人を守る手段はないと判断したからだ。
幸い、クリスティアーネのフルミナントソードは雷属性。ティガレックスに対しては特に有効な武器だ。彼女が付いていれば、簡単にやられてしまうことはない。
「……あの迅竜はこのまま俺が狩る。お前達は轟竜の注意を逸らしつつ、防御と回避に専念しろ。奴を片付けたら、すぐに俺も合流する」
「ディノさん……」
「しかしディノ様、あなたの武器は火属性です! ナルガクルガの討伐なら、雷属性の武器がある私の方が……!」
「済まんが、ここは俺の顔を立ててくれ。いつまでもお前ばかりに苦労を掛けていては、武人以前に男が廃る」
「……っ」
そんな彼の胸中を察し、その身を案じるクリスティアーネに対して。ディノは敢えてハンターとしてではなく、「男」としての答えを告げる。
「ディノ、様……」
それは体格や実力故に、ハンターになってからは「女」として扱われることがなかったクリスティアーネにとって、初めての体験であった。その感情に由来する「本能」によるものなのか、彼女の頬は桃色に染まっている。
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