特別編 追憶の百竜夜行 其の四
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ウツシの同期達は新人らしからぬその手腕を以て、百竜夜行の侵攻を辛うじて食い止めている。だが、群れを率いている「大物」が健在である以上、この戦いを終えることはできない。
同期達が耐え切れず物量に押し潰されるのが先か、首魁を討って群れを瓦解させるのが先か。その命運は、リオレイアと対峙している前線のアダイト達に懸かっている。
拠点に搬送されたウツシにも、それは分かっていた。彼らだけでは、あの大物は仕留め切れないということも。
「まだ、奴を討つには足りないんだ……! 俺が、俺が行かないとっ……!」
「無理に動いては駄目、身体に障る。応急薬は確かに傷は癒せるけど、出血で消耗した体力までは戻らない」
そんな彼をここまで送り、看病していたエルネア・フェルドーは。疲れ果てた身体を引きずり、戦線に戻ろうとするウツシの肩に手を置き、座らせようとする。
だが、ドボルシリーズの重量を乗せて制しようとする彼女の手を掴むウツシは、力強い瞳で彼女を射抜いていた。ここだけは、敬愛する同期達にも譲るわけには行かないのだと。
「分かっていたさ……ずっと前から分かっていた。強く気高く、情に厚い君達ならば必ずそう言うだろうとね。だが、だからこそ俺が……いつまでもここで寝ているわけには行かないんだ」
「……困った時は助け合い。あなたが気負う必要はない」
「ふっ……変わらないね、エル。俺も、君が知っている俺のままだ。なら、分かるだろう? こう見えて、結構頑固な奴だってことはね」
お互い、昔から変わっていない。短いやり取りの中でも、すぐに分かってしまう。
「……!」
「エルッ!」
それ故にため息を溢すエルネアの背後に――バサルモスが現れたのはその直後だった。
拠点と前線を繋ぐ通路も未完成だったために、モンスターが容易く侵入できてしまう状態になっていたのである。だが、エルネアの眼に動揺の色はない。
ハンターは常在戦場。この程度の非常事態に狼狽えていては、生き延びることなどできないのだから。
「……邪魔」
振り向きざまに、パワーバレルを装着したモンテベルデを引き抜いた彼女は。熱線を放射しようとしていたバサルモスの顔面に、至近距離からの接射をお見舞いする。
文字通り出鼻を挫かれてしまったバサルモスは、思いがけない反撃に体勢を崩してしまうのだった。その隙にウツシは翔蟲を飛ばし、岩竜の巨体に鉄蟲糸を絡ませていく。
「ハァッ!」
消耗した身体を補うべく、鉄蟲糸を利用してバサルモスの身体に飛び乗り、操竜状態に持ち込んだのはそれから間もなくのことだった。
「これなら俺の体調なんて関係ないだろう? さぁ、行こうかエル! 俺を死なせたくないというのなら、一緒に付いてくるし
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