特別編 追憶の百竜夜行 其の三
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深いらしく。悪意なしに傷口を抉るシンの発言に対し、アテンスは援護に徹しながらも真っ赤になって懸命に反論していた。
「……仕留める」
一方で。その近くにいたドスフロギィの対処に当たっていた、もう1人の小柄な少女は。毒を以て毒を制すと言わんばかりに、毒属性を持つデスペラードIを振るっている。
スパイオシリーズに身を包む彼女――ユナは、その小さい身体を活かしてドスフロギィの懐に飛び込むと、ここぞとばかりに鬼神連斬を放っていた。そんな彼女の戦いぶりを目撃したシンは、豪快に彼女の技を称賛する。
「おおっ! 相変わらずやるやないか、ユナ! その懐に飛び込んで一気に斬り刻む技、ワイには出来る気がせんなぁ! まさしくお前の専売特許やでぇ!」
「……う、うるさい」
無論、そこにも悪意は一切ないのだが。アテンスと同様、発育の悪さを気にしているユナとしては、その戦法が「出来てしまう」自分の体型について触れられたくはないのである。
「……うるさい……」
とはいえ、褒められることが嫌というわけでもなく。僅かな「嬉しさ」も滲ませた複雑な表情でシンを一瞥する彼女は、むすっとした面持ちで文句を零すしかないのであった。
「よし……ここからならよく狙える! 食らえッ!」
そんな彼らの攻撃により、弱り始めていたアケノシルムとドスフロギィを、高台から狙っている者がいる。カムラノ鉄弓を引き絞っている、そのハンターの名はディリス・ハルパニア。
「はぁッ!」
「おぉっ……!?」
イズチシリーズの防具に袖を通している彼は、狙い澄ました矢の一閃を以てモンスター達の眉間を射抜き、2頭を続けざまに討ち取るのだった。その腕前を目撃したシンは、爆発するような歓声を上げる。
「やりよるなぁ、ディリスの奴ッ! あんな高いところから、奴らの急所だけに当てよったで! やっぱあいつも男の中の男! 可愛いのは顔だけってことやなッ!」
「うるっせぇえ! こっちまで聞こえてんだよシンッ! 俺は最初から男の中の男だっつうのッ!」
弓の手腕を全肯定しつつ、コンプレックスの女顔にもしっかり言及してくるシンの称賛は、高台にいるディリス本人にも届いていたらしく。
女性と見紛う容姿に思い悩んできた彼は、デリカシーに欠ける同期の笑顔に、なんとも言えない表情で怒号を飛ばすのだった。
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