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黒猫現る 少しの夢を見させる 娘と父親 編
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[8]前話
「お父さん 起きてよ 式は11時からだからね 遅れないでよ 私 着付けあるから、もう、出るわよ 絶対に遅れないでよ 30分前には来てね それから、お父さんも、これから良い人見つけてね あれだけ、愛してくれたから、もう、お母さんも怒らないと思うよ」

 そうか、今日は、あかりの大切な日だ。だけど、何を言って、出て行ったんだ。私は、着替えて、郷子の仏前に向かって

「行ってくるよ 郷子 お前も見守ってやってくれ、あかりの花嫁姿 昨日は現れてくれてありがとう」

 - - - - - - - ☆ ☆ ☆ - - - - - - -

 式を終えて、私は、独りで家に帰ってきた。ビールを片手に庭に向かって、座っていた。

 あの黒猫が現れて、

「おお 夢を見させてくれるって言ってたよな いい夢だったよ ちょっと待て、サバの缶詰が確かあった」

 と、皿にあけて、黒猫の前に置いて、私は、着替えに行った。
 
 寝室に入ると、白いレースのナイトウェァがハンガーに掛かっていた。確か、萌黄色のワンピースを掛けていたはずだが・・。朝は、気づかなかった。いつの間に・・。

 不思議な気持ちで、黒猫のもとに戻って

「あれも、お前がやったのか」と、猫に向かって聞いた。

「そうだ お前にいい夢を見させてやった 父親思いのいい娘だ これからは、その夢を抱いて、前を向いて行けよ」と、垣根に消えて行った。

 そういえば、している最中は、郷子は章一さんと呼んでいたはずが、昨日は あなた と言ってしがみついてきていた。あの若い肢体 まさか・・・




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