第5節「砕けたシンフォギア」
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『翔くんッ!応答するんだ、翔くんっ!』
「くぅッ……翔……くん……」
通信から聞こえる声に瞼を開くと、周囲が先程以上に酷く抉れていた。
キャロルの立っている場所を中心に、まるでカップ入りアイスの縁の部分に沿ってスプーンで削ったかのようだ。
「くッ……うぅ……」
アンカーが外れた瞬間、膝を着く。
ヘッドギアの部分に備え付けられたランプは赤く点滅し、RN式の維持に限界が来ている事を伝えてくる。
ダメージを受け過ぎた。真正面から受け止めたんだ。こうなるのは当然か……。
「翔くんッ!」
「大丈夫だ……何とか……」
駆け寄ってきた響が肩を貸してくれる。
正直、立っているのがやっとだ。
「はぁはぁはぁはぁ……はぁ……」
対するキャロルもまた、今ので消耗したらしい。膝に手を着き、息を整えている。
追撃がないことを祈りたいが……俺が体勢を整えるより先に、響が口を開いていた。
「どうして……世界を……」
「父親に託された命題だ……。お前にだって……あるはずだ……」
「──ッ!?お父さん……に……?」
父親に……?
泣いていた事といい、ただならぬ事情を抱えているようだが……。
それを問おうとしたその時、新たな声が割り込んだ。
「めんどくさい奴ですね〜」
見れば、先程までキャロルが立っていた渡り廊下の手すりに、青いメイド服のような衣装の少女が腰掛けている。
……否、確かに外見こそ少女のそれだが、よく見ればその膝や足首は球体関節で、肌の色は無機質な白。まるで人形、いや、人形そのものだ。
喋る人形……錬金術士が作ったものなら、自動人形と言うべきだろうか。
「……見ていたのか。性根の腐ったガリィらしい」
「やめてくださいよー。そういうふうにしたのは、マスターじゃないですかー」
ガリィと呼ばれた自動人形は、キャロルの隣に降り立つと、バレリーナのように踊りながら、報告を始める。
動く度にカラコロとオルゴールの様な音が鳴り、まるで彼女が人ではない存在である事を強調しているかのようだ。
「想い出の採集はどうなっている?」
「順調ですよ。でも、ミカちゃん大食らいなので足りてませ〜ん〜。うえ〜んえんえ〜ん〜」
ガリィのわざとらしい嘘泣きを無視し、キャロルは静かに告げる。
「なら急げ、こちらも出直しだ」
「りょーかーいッ!ガリィ、がんばりまーすッ!ほいッ!」
おちゃらけた態度で敬礼しながら、ガリィは何処からか取り出した蛍光ピンクに光るアンプルのようなものを、地面へと投げる。
するとアンプルは砕け、水面のような波紋と共に、地面に六角形を基調とした蛍光ピンクの魔法陣が広がる。
「さよ〜なら〜」
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